三菱ふそうトラック・バスが描く未来、新規事業でバスドライバー派遣もあり!?
新型コロナウイルス感染症拡大とともに大打撃を受けた観光業ですが、5類以降後は順調に回復。円安の後押しもあってインバウンドも好調です。
しかしその一方でバス運転手不足が深刻で、2024年4月から施行された「バスの運転者改善基準告知」により、さらに「バスは空いていても運転手がいない」という状況となっています。
そんな中、4月に三菱ふそうトラック・バスによるメディア向けのラウンドテーブルが開催されました。バス事業の状況とともに、三菱ふそうトラック・バスが今後取り組んでいきたい事業についてご紹介していきましょう。
2023年から生産台数は上向き、メーカー・事業者ともに苦しい中で耐えてきた数年
三菱ふそうトラック・バスで供給しているバスは大別すると小型マイクロバス「ローザ」、大型路線バス「エアロスター」、大型観光バス「エアロエース」「エアロクイーン」の4種類です。
大型観光バスは2009年ピーク時に約2,000台だったものが、2019年から始まったコロナ禍では大幅に落ち込みましたが、徐々に回復傾向に。ピーク時にはまだ到達していないものの、それに近い数字は出せているとのこと。また、路線バスはピーク時1,600台で、こちらも回復途上にあるといいます。
小型マイクロバスに関しては海外での需要が順調で、国内よりも回復が早く2022年から生産台数を伸ばしているそうです。
新型コロナウイルス感染症への不安でバスの利用を控えてしまう利用者に対し、空調の換気性能が優れていることを可視化させる動画を撮影して提供。
抗菌コートや抗ウイルス剤の提案や運転席と座席の間に仕切りを付ける、路線バスの窓にバイザーを付けて雨が吹き込まないようにする商品の開発などにも尽力してきました。
観光バスのニーズは今後は格安・豪華の二極化が進む?
三菱ふそうトラック・バスが考える今後の潮流としては、1度に多くの人数を運べるバスと人数を絞ってゆったり移動するプレミアムバスへのニーズが二極化するのではないか、という予想です。
確かに、貸切バスを借りるお客様から「できるだけ安く移動したい」というニーズは根強くあり、事務局では「60名乗れる大型バス」「30名乗れる中型バス」を借りたいというリクエストもよくいただいています。
そんな中、三菱ふそうトラック・バスから登場したのが従来12列シートのところを13列シート(ハイデッカー車)にした65人乗りのバス。2019年の「バステクin首都圏」で初めて見ましたが、12列シートよりも足元が広々してびっくりしたのを覚えています。
シート形状を改良することで一度に正席で53人(補助席利用を含めて65人)も運べ、かつ、ゆったりと座れるというのは画期的。ツアーバスで大勢の参加者を送迎できれば、旅行会社の利益率もあがりますし、試合や合宿の送迎、シャトルバス利用にもコストを抑えることができてありがたいですね。
その一方でもっと快適に、贅沢に移動したい、というニーズも。「バステクフォーラム」「バステクin首都圏」でもたびたび紹介されてきましたが、豪華仕様に改造したバスは着実に増えていると感じます。
また小型観光バスの製造が終了。バスの耐用年数である20年に近づきつつある今、最も小さな観光バスとして、マイクロバスの豪華仕様バージョンを導入するバス会社も増えています。
「もっと安く手軽に移動したい」「少しくら高くてもいいからゆったり、思い出に残る旅をしたい」という2極化傾向は今後も進むと考えられ、そのニーズに応えられるバスの提案を、と三菱ふそうトラック・バスでは考えているそうです。
慢性的なバス事業者に対し、ドライバー派遣も視野にいれた取り組みも
冒頭でもお伝えしましたが、2024年4月から施行された「バスの運転者改善基準告知」。バス運転手に限らず、トラックやタクシーも同様に労働時間(拘束時間)が短くなったことで、ドライバー不足をどのように解決していくかが業界全体の鍵となっています。
今後、観光バス・路線バスの利用がコロナ前の水準(もしくはそれ以上)に回復する上で、ドライバーの確保は急務といえそうです。そんな中、三菱ふそうトラック・バスが考えているのがドライバー派遣を検討したい、ということ。
バス製造メーカーという性質上、バスの運転免許を持っている社員が多く、せめて繁忙期だけでもサポートできたら、という想いから今後取り組みたいという構想もあるそう。
もちろん、人材派遣業の資格が必要など、これまでとは違ったビジネスモデルとなるため、クリアしなければならない課題はたくさんあります。それでもバスをただ製造(供給)するだけではなく、業界とともに発展していきたい、そんな強い決意を感じるラウンドテーブルでした。
■取材協力
バス会社の比較がポイント!