ミドリムシで走るバス!?未来の乗り物のカタチ
皆さん、こんにちは!ベテラン(?)編集部員Iです。
今回はいすゞ自動車さんが進めているプロジェクト、「DeuSEL(R)(デューゼル)」について取材してきました。
ハイブリッドでもない、天然ガスでもない、新しい燃料がある
環境負荷を低減するため、各自動車メーカーがさまざまなタイプの燃料や工夫を重ねている中、ちょっとおもしろいニュースが飛び込んできた・・・。
「ミドリムシ燃料で走るバスがある!」
ミドリムシといえば、最近注目されている「ユーグレナ」のこと。
植物と動物両方の性質をもつ藻の仲間で、野菜・魚・肉59種対の栄養素を持つといわれているスーパーフードではありませんか!!
そんなユーグレナが燃料になるって、ドウイウコト?
そこには若手社員のユニークな着眼点と、常識にとらわれずチャレンジできる社風、神がかり的なタイミングがありました。
飛行機が飛ぶなら、車も走らせることができるに違いない
2015年12月1日、ミドリムシを原料にしたバイオ燃料を研究しているユーグレナ、
横浜市、千代田化工建設、伊藤忠エネクス、いすゞ自動車、ANA(全日本空輸)による共同記者会見が行われました。
その計画は、オリンピンク・パラリンピック東京大会開催年である2020年の実現を目指し、
次世代航空燃料の供給体制確立を目指そうというものでした。
現在の燃料は化石燃料である原油を使って精製されているもので、
将来的に資源枯渇が危ぶまれています。また、二酸化炭素排出量の問題も・・・。
それに代わるバイオマス由来の燃料を開発することはまさに急務。
ゴミや廃材、糖、アルコールなどさまざまなバイオマスを使った燃料の研究が進められる中、
スポットを浴びたのが「ミドリムシ(ユーグレナ)」だったのです。
ミドリムシはCO2を吸収し、酸素をつくる「光合成」を行っています。
その光合成効率は熱帯雨林数倍といわれるほど!
DeuSEL(R)は、ミドリムシが成長する過程でつくりだされる油を使用するので、
そこから排出されるCO2はもともとミドリムシが吸収したもの。
新たにCO2を増やすことはなく、環境負荷が限定的な炭素循環型の燃料になるというわけです。
また、ミドリムシは培養するのに土地は不要。
食糧の価格変動等に影響を与えません。
持続的に供給可能なミドリムシの存在は、日本の資源問題を解決できる希望の光といえるでしょう。
いすゞ自動車がミドリムシ燃料に注目するきっかけになったのは、合同記者会見からさかのぼること3年前の2012年秋。
社内で行われた20年、30年先の未来を見据えた技術開発プロジェクト・チームの発足にありました。
石油資源がない日本。なかなか減らないCO2排出量。
そんな中、環境負荷の少ない燃料で走る乗り物をつくるメーカーでありたい。
小型車は電化が進むだろう、長距離輸送のトラックやバスは?
ハイブリット化というのも一つの方向だが、
もっと環境に負荷をかけず、今と同じ馬力で走る燃料はないのか・・・。
当時のプロジェクト・リーダーとしてミドリムシ燃料開発を提案した小林寛さんは
「飛行機が飛ぶなら、バスも走るはず」
と思ったそうです。
実は、ANA(全日本空輸)では2013年初頭からバイオジェット燃料の開発をユーグレナとすでに進めていました。
ジェット燃料は軽油に似ているので開発は可能なはず。
社内のプロジェクト・チームメンバーに、ミドリムシ燃料について打ち明けたとき
「誰もバカにしなかった」
「みんな真剣に、実現の可能性について一緒に取り組んでくれた」そうです。
そして、社内でプレゼンテーション後、
これで終わりたくないという思いがあり、会社に継続して活動したいと
申し入れたところ承認されたので、さっそくユーグレナ社にコンタクト。
先方の担当者から
「まってました!」
といわれたそう。
ユーグレナ社もジェット燃料だけではなく、車の燃料も開発できると思っていた。
でも、どこにどうアプローチしていいかわからなかったので、困っていたところにいすゞから声がかかった。
「まさに“渡りに船”という状況だったわけですね(笑)」
そこからトントン拍子に話は進み、2014年6月25日にはテスト走行。
7月1日からはいすゞ藤沢工場と湘南台駅を結ぶシャトルバスとして定期運行スタート。
いまこの瞬間も工場に勤務する社員たちの足として毎日活躍しています。
将来的にはミドリムシで「軽油」そのものがつくれるようになる
では、ミドリムシの燃料はどのようにつくられるのでしょう。
匂いをかぐと、茶色のワックス状態のものはかすかに藻のような海藻っぽい匂いがします。
精製した透明な方は軽油に近いですが、さっぱりとして軽い感じの匂い。
ミドリムシはある条件のもとに育てると、その体内に「軽油に近い油が生成」されます。
この油分を抽出・精製し、従来のディーゼルオイルに約1%ブレンドしてできたのが
「DeuSEL(R)」です。
「DeuSEL(R)」ということばは
Diesel(ディーゼル)の「D」と「sel」、
euglena(ユーグレナ)の「eu」を掛け合わせた造語になっています。
なぜ、1%のブレンドなのかというと法律上、
軽油にブレンドしていいのが5%までという制約があるからです。
「将来的には100%、ミドリムシ燃料にしたい。
すでに軽油そのものを抽出する技術もある」
コストの問題、大量培養の技術をクリアできれば、すぐにでも実現可能だと小林さんはいいます。
そうなれば、バスにミドリムシを培養するタンクを搭載し、
燃料を精製しながら走るという夢のような乗り物が実現します。
まるで映画「バック・トウ・ザ・フューチャー」みたい!!
そんな未来もそう遠くないかもしれません。
原料となるミドリムシを育てているのは沖縄県・石垣島にあるユーグレナ社のファーム。
ミドリムシがすくすくと生育するためにはたくさんの陽射しと、美しい水、澄んだ空気が必要です。
石垣島は1年の平均気温が23度以上で晴天が多く、豊かな自然環境が残されているため、
ミドリムシの大量培養に最適な環境。
しかもこの大量培養技術は日本だけの技術で、他国からの資源輸入に頼る今の状況を大きく変えてくれる可能性があります。
まさに、夢のような日本の豊かな未来がそこにありました。
「普通と変わらない」走行が可能なバス
ユニークな燃料ということで注目され、マスコミからの取材や学校からの見学依頼を引き受けることがあります。
そんな時にいちばん困るのはレポーターさん。
実際にバスに乗りながらレポートしようとすると・・・。
「このバスの乗り心地は・・・・いたって普通です!」
そうなんです。普通のディーゼルオイルで走るバスとまったく変わらずに走れるのがポイント。
乗り心地の違いがないのが特徴なので、みなさん困り果ててしまうそう。
ミドリムシ燃料だからといって、燃費が悪いわけでもなく、
パワーがないわけでもない。
従来の軽油とまったく同じに走れる!そこがスゴイのですから・・・。
また、子どもたちの質問もなかなかユニーク。
「ミドリムシはどこにいるの???」
どうやら、燃料の中をミドリムシが泳いでいると思うらしく、
一生懸命探すそうです。
「ミドリムシ」は「ムシ」とついてるけど、
藻の仲間だから虫じゃないんだよ~わかったかな?
お話をうかがいながら、いすゞさんで「ユーグレナオレ」をごちそうになりました。
粉末のユーグレナと牛乳、少し練乳を加えるのがポイント。
青汁よりも飲みやすいかもです。
ユーグレナは食糧・燃料以外にも、化粧品としても注目されていますね。
朝目覚めたら顔を洗ってユーグレナ化粧品で肌を整え、
朝食にユーグレナを摂って、ユーグレナ燃料のバスに乗って通勤・・・。
私たちの生活のすべてにミドリムシが取り入れられる日はすぐそこにあります。
2020年、あと4年後。
東京オリンピック・パラリンピックに出場する各国の選手たちは
ミドリムシのジェット燃料で飛ぶ飛行機で東京にやってくるかもしれません。
競技会場と選手村をつなぐシャトルバスにはDeuSEL(R)」燃料が使われてているかもしれません。
そして、さらに数年後には、ミドリムシを培養しながら走るバスが
東京を駆け抜けているかも・・・・。
いすゞ自動車さん、
お忙しい中、取材にご協力いただき、ありがとうございました!
これからも注目させていただきます。
~おまけ~DeuSEL(R)バスを組み立ててみたっ!
いすゞ自動車さんのギャラリーに展示されていた
DeuSEL(R)バスのクラフトをお土産にいただきました。
中を開くと内側にはバスのパーツが・・・
結構細かいパーツなので慎重に、慎重に・・・・
ええ、そうです、そうです。老眼なんで見えないんですよーーー
ちゃんと後ろのタイヤが2個ついてる。
できた!!
入口に飾っておこう。
ミドリムシ燃料が量産されるようになったら、
街中でもこういうバスをたくさんみかけるようになりますね!
[取材・撮影協力]
いすゞ自動車株式会社
http://www.isuzu.co.jp/
■ISUZU×euglena Deusel(R)特設サイト■
http://www.deusel.jp/
バス会社の比較がポイント!