定期送迎ならバス料金は安くなる?工場・学校・駅までの送迎バスをお得に手配するコツ
バスを運転手付きでレンタルしたい。スポットで借りるのではなく、シャトルバスのように同じルートを1日に何度か往復して欲しい。工場が少し離れたところにあるので、駅までの定期送迎を検討している。
そんな場合、見積もりを取り寄せたらすごく高くてびっくりしたという経験はありませんか?実はバス事業には3つのライセンス(事業許可)があります。
それぞれのライセンス(事業許可)ごとに料金体系が決まっており、例えば高速バスと同じ料金を貸切バスに適用することはできないのです。
今回はバスを定期的に同じルートで利用したい方向けに、できるだけわかりやすくバス料金の仕組みを解説していきます。
バスの運行には「路線・高速」「貸切」「特定」3つのパターンがある
私たちが日常的に利用しているのが「路線・高速」バス。駅までの通勤や通学、買い物などで利用する路線バスは、毎日決まった時間に同じルート、同じ料金で運行しています。
高速バスも走らせる距離は長いですが、ほぼ同じ時間・同じルート。ただし、料金は季節変動がありますね。
そして貸切バスは契約ごとに時間・ルート・料金が異なります。こちらは利用者の要望に合わせてオーダ―メイドでカスタマイズするため、時間・距離制で単価が決められており(タクシーと同じ)、見積もりを事前に取ることが必須となります。
そして「特定バス」とは、決められた範囲のお客様を目的地まで運送する事業のこと。職員を駅から工場まで毎日送迎する。生徒を学校まで送迎する。介護利用者を施設まで送迎するなどです。
以下、簡単に一覧表にしてみました。
路線・高速 | 貸切 | 定期送迎 | |
事業免許 | 一般乗用旅客自動車運送事業 | 一般貸切旅客自動車運送事業 | 特定旅客自動車運送事業 |
運行ルート | 固定 | 自由 | 固定 |
運行時間 | 固定 | 自由 | 固定 |
料金(運賃) | 上限運賃で認可・実施運賃届け出 | 最低基準額を下回らない | 事前届け出で認可必要 |
行程変更 | 不可 | 可能(当日は原則不可) | 不可 |
営業区域 | 事前に申請・許可 | 営業所がある都道府県からの発着のみ | 決まった場所までの送迎に限る |
利用客 | 誰でも利用可 | 契約ごとの団体 | 特定客のみ |
どこをどう走らせるかあらかじめ決めて走らなければならないのが路線・高速バス、さらに乗せる乗客も決められているのが特定バス、すべて自由(誰を乗せてどう走らせるか)なのが貸切バスということになります。
自由度でいえば貸切バス>路線・高速バス>特定バスの順です。
路線バス・高速バスの料金はなぜ安いか?
都心部の路線バスは、だいたい210円程度の固定料金で乗車できます。本数や利用者が少ない地方の場合は、移動距離により料金が変わる仕組みがほとんどでしょう。
高速バスの料金体系は路線バスと同じですが、繁忙期・閑散期で運賃を変更しています。利用者が多い時は高く、少ない時は安いというわけです。
しかし、高速バスと同じルートを貸切バスで走らせた場合はどうして高くなるのでしょうか?例えば東京から大阪までの夜行バスになると、貸切バスで運行した場合、かなり料金が高くなります。
高速バスの場合は、走らせるルート・時間が固定されており、交替運転手が横になって休める場所がしっかり確保されています。片道だけ利用しても、バスは別のお客様を乗せてまた同じ場所に戻ってこれるので効率がいいんです。
しかし、貸切バスは片道だけの利用であっても、また同じ営業所までお客様なしで戻らなければなりません(回送)。また、運転手がしっかり休憩できる場所がなく、ホテル等を予約するためその分の実費やバスの駐車場料金も必要です。
深夜・早朝運行、長距離運行は必ず交替運転手が必要になるため、人件費も2倍。貸切バスは自由度が高い反面、安全運行のために料金は高くなりがちなのです。
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路線バス・高速バスを団体で貸切できないの?
もし行き先が同じなら「路線バスや高速バスを貸切できないの?」と思うかもしれません。しかし、冒頭で紹介したとおり、それぞれ事業免許が異なります。
つまり、路線バス・高速バスは「一般乗用旅客自動車運送事業」で、貸切バスは「一般貸切旅客自動車運送事業」と別の事業免許を取得しなければなりません。
もちろんバス会社によっては、両方の事業免許を取得して運行しているケースがたくさんあります。例えば、都営バスでは“路線バス”の貸切も扱っており、TVの撮影などにもよく利用されてますよね。
しかし、路線バス・高速バスを貸切運行した場合は、料金体系は“貸切バスとして計算”されます。つまり、同じルートを走らせたとしても料金は高くなります。
高速バスの座席をすべてを自分たちで予約して貸切バスのように利用することはできますが、ルート変更や時間変更はできませんので、ご注意ください。
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・路線バスは貸切できる?
・高速バスは貸切できる?
定期送迎バスは「特定旅客自動車運送事業」のライセンスを持つバス会社に依頼すると安い
「特定旅客自動車運送事業」とは、特定の範囲のお客様をあらかじめ決まった目的地へ運送することをいいます。具体的には以下のような送迎でよく利用されています。
- デイサービスなどで利用者を送迎
- 幼稚園や学校のスクールバスで児童を送迎
- 最寄り駅から工場まで従業員を送迎
- 最寄り駅から病院まで患者を送迎
- 最寄り駅から旅館やホテルまでお客様を送迎
いずれの場合でも同じルートで特定の乗客を乗せて定期的に運行しています。この場合、自由度がさらに制限され、利用客もある程度決まってくることから、年間の売り上げや安全運行のための経費などがほぼ正確に予測可能。
その分、貸切バスよりも安い料金設定で運行しやすくなります。貸切バスの料金は国土交通省が公示した「新公示運賃額」を下限としており、それよりも安い料金で見積りを出すこができません。
このため、「特定旅客自動車運送事業」免許を取得しているバス会社と持っていないバス会社で見積りをとって料金を比較すると、「特定」を持っているバス会社の方が安い料金で出せる可能性があるというわけです。
実際の料金はバス会社ごとに異なるため、見積りをとってみないとわかりません。参考までに国土交通省の「貸切バスの年間契約についてというお知らせでは、約3割引きすることが可能とアナウンスされています。
条件はいろいろありますが、こちらが参考になるのではないでしょうか。
定期送迎でバス料金を安く抑えるには「特定バス」の免許があるバス会社がおすすめ
狭い範囲で、特定の乗客を定期送迎したい場合。貸切バスでももちろん対応することはできますが、料金計算については国土交通省が定めた上限を下回らない料金でお見積を出すことになります。
年間で契約し、ずっと利用するものなでできるだけ経費を抑えたいという場合は、一般的に「特定バス」の免許を持つバス会社に相談する方が安く見積りを出せるようです。
お近くに営業所があるバス会社のホームページ・会社概要に、取得している事業ライセンスが記載されています。そちらで「特定」を取得しているかどうかチェックし、問合せてみてはいかがでしょうか。
バス会社の比較がポイント!