線路と道路の二刀流、阿佐海岸鉄道「DМV」がお台場・鉄道フェスティバルにやってきた
9月20日が「バスの日」であるように「鉄道の日」もあります。それは10月14日で、新橋・横浜間に最初の鉄道が開通したことを記念して1994年(平成6年)に制定されました。
JR、民鉄等鉄道関係者が、鉄道に対する理解と関心を深めることを目的として一堂に会し、鉄道の発展を祝うとともに、多彩な行事を実施しています。最も有名なのがお台場イーストプロムロード「石と光の広場」「花の広場」で行われるイベント「鉄道フェスティバル」。
2024年は10月13日(日)・14日(月・祝)で開催されました。今回、阿佐海岸鉄道が世界初の本格営業運行している鉄道・道路両方を走行できる車両「デュアル・モード・ビークル(DMV)」が徳島からやってくる!
ということでバス観光マガジン編集部のちくわが取材に行きたいとわめいていたのですが、出張と重なり断念・・・。代わりに私、権藤が取材に行ってきました。
東京発上陸となる阿佐海岸鉄道「DMV」とはどんなものか。その魅力をさっそくご紹介しましょう。
小型マイクロバスをベースに改造されている阿佐海岸鉄道「DMV」
阿佐海岸鉄道の「DMV」はトヨタ自動車のマイクロバス「コースター(SKG-XZB70-ZRTNY)」をベースに改造。外観でいうと、フロント部分に出っ張りがあるのが大きな特長です。
この突き出たフロント部分にレールを走るための鉄道用車輪(前輪)が収められているそうです。乗車定員数は21名(座席18+立席3)となります。
「DMV」のカラーリングは3種類
阿佐海岸鉄道の「DMV」は現在3台が運行中。カラーリングデザインが3台とも異なります。
今回のイベントにやって来た車両は青の1号車(DMV931)で、「未来への波乗り」という愛称。太平洋の豪快な波がモチーフで、宍喰(ししくい)駅のマスコット「伊勢ぇび駅長」がサーフィンするイラストがあしらわれています。
緑色の2号車(DMV932)は「すだちの風」。そよ風感じる爽やかなデザインで、阿波の名産である「すだち」を表現しています。空高く舞い上がる白い鳥は徳島県の鳥である白鷺です。
赤色の3号車(DMV933)は「阿佐海岸維新」。真っ赤なボディには、高知県が誇る英雄・坂本龍馬と南国土佐に降り注ぐ太陽をデザインしています。地域活性化の情熱が込められている、というわけです。
「DMV」が走る運行ルート
「DMV」が運行しているルートを紹介します。徳島県海陽町と高知県東洋町を結ぶ海岸線を1日8往復。
平日は「阿波海南文化村」から「道の駅宍喰(ししくい)温泉」までで、そのうち、鉄道モードで運行するのは「阿波海南駅~海部駅~宍喰駅~甲浦駅」です。
土日祝日のみ1日1往復、「道の駅 東洋町」から、むろと廃校水族館・室戸世界ジオパークセンター・室戸岬・海の駅とろむまでを運行(道の駅宍喰温泉にはいかない)。人気の観光施設を巡るというルートになっています。
阿佐海岸鉄道「DMV」はわずか15秒で鉄道・バスモードが切り替わる
「DMV」がバス⇔鉄道モードに切り替わる様子をデモしていました。道路を走行するバスモードの車体から鉄道を走るための鉄車輪が出てくるまでのモードチェンジはわずか15秒。
バスから鉄道モードに切り替わった時、レール上で車体の重量配分を行いながらバランスをとるため、実際には30秒ほどかかるそうです。
このモードチェンジはお客さんを乗せたまま行います。
フロントの出っ張った部分から鉄車が降りてきて、車体前部がタイヤと共に浮き上がります。後部タイヤより後ろ側からも鉄車輪が出てきますが、後部タイヤはそのまま駆動輪となるので、接地したままです。
鉄の車輪が走らせるわけではなく、線路から外れないようにガイドのような役割を果たしています。バスに備わっている駆動系で動かしているので意外にシンプルな改造なのだなと思いました。
水陸両用バス同様、鉄道を走らせるための免許が必要な「DMV」
以前、横浜を走る水陸両用バスの取材をした際、水陸両用バスのドライバーさんは、バスの免許はもちろん、船舶免許も取得が必要とうかがいました。
当然、「DMV」も鉄道を走るわけですから、気動車を運転する免許(甲種内燃車運転免許)が必要です。イベント会場では「DMV」の運転士さんの募集も行っていました。
両方持っていないとダメなわけではなく、入社後に取得もOKなようです。どちらか持っていて片方を取得してもらったという運転士さんもいらっしゃいます。
鉄道とバスの二刀流、そんなお仕事もなかなか格好いいですね。
阿佐海岸鉄道「DMV」を活用して楽しむ徳島・高知観光
この「DMV」に乗ることそのものが魅力的な観光資源ですが、せっかくなので「DMV」に乗って楽しめる徳島・高知観光もご紹介しちゃいましょう。
阿波海南文化村
「DMV」の発着地点である「阿波海南文化村」。海陽町の文化遺産を知ってもらうためにつくられた博物館です。
海陽町立博物館では、大坂の陣で活躍した海部刀や六世紀末のものとされる大里古墳を復元したジオラマ、全国でも上位の出土枚数70,088枚を誇る大里出土銭など、海陽の郷土文化遺産を展示。兜・陣羽織の着用体験もできます。
工芸館は工芸、染色、陶芸、木工、竹細工、絵画等の様々な体験学習ができる施設。「木工体験」「藍染体験」は定期的に開催されています。
県南部の海部郡では、朱塗りの船形だんじりを「関船」と呼んでいるそうです。関船展示館では、浅川天神社の関船を展示しています。
この他、イベントなどが行われる文化館、三幸館、いきいき館も。気軽に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
Information
阿波海南文化村
開館時間:8時30分~17時15分、毎週月曜休み(祝日の場合は翌日が休み)
住所:徳島県海部郡海陽町四方原杉谷73
問合せ先:0884-73-3100(海南文化館)
*博物館の入館料は大人300円、高校生以下無料、15名以上で団体割引あり。
道の駅宍喰温泉
「道の駅宍喰温泉」は、徳島県の最南端にある施設で、「室戸阿南海岸国定公園」のほぼ中央にあります。地元のお菓子や工芸品、海産物などのお土産を販売する物産コーナー、直売所、海陽町出身の(ジャンボ・ジェット・ジョー)尾崎三兄弟(プロゴルファー)のコーナーも。
「DMV」グッズもありますよ。
道の駅には全室オーシャンビューの宿泊施設「ホテルリビエラししくい」があり、日帰り入浴もOK。太平洋の超深層1,000mから湧き出る天然温泉で、展望大浴場からは太平洋を一望できます。
Information
道の駅宍喰温泉
営業時間:9時~18時
住所:徳島県海部郡海陽町久保字板取219-6
問合せ先:0884-76-3442(道の駅宍喰温泉)/0884-76-2969(物産コーナー)
バス駐車場:大型バス3台
道の駅 東洋町
「道の駅 東洋町」は、高知県内最東端にある施設で、海まで0分の道の駅です。毎朝水揚げされた鮮度抜群の魚介類、旬の野菜、県内の特産品などを豊富に取り揃えています。
御食事処では地元産の一度も冷凍していないマグロを使ったどんぶりもの、カツオのたたき定食、東洋町産うなぎを使ったうな丼などをラインナップ。直売所で購入したお魚を調理してもらってイートインスペースでいただくこともできます。
キャンプや日帰りBBQもOK。
Information
道の駅 東洋町
営業時間:直売所 9時~17時/レストラン9時~17時(15時~17時まではカフェメニューのみの提供)
住所:高知県安芸郡東洋町大字白浜88-1
問合せ先:0887-23-9955(電話受付 9:00-17:00)
バス駐車場:要問合せ
むろと廃校水族館
「むろと廃校水族館」は旧椎名小学校を改修して2018年4月にオープンした人気施設。屋外プールや校舎内に設置した水槽では、ブリやサバ、亀などがのんびりと泳いでいます。
懐かしい机や椅子もそのまま残されているので、地元からも愛されています。
Information
むろと廃校水族館
営業時間:9時~18時(10月~3月は17時まで)
入館料:高校生以上600円、小中学生300円
住所:高知県室戸市室戸岬町533-2
問合せ先:0887-22-0815
バス駐車場:要問合せ
室戸世界ジオパークセンター
「室戸世界ジオパークセンター」は、室戸ユネスコ世界ジオパークの拠点施設として2015年4月29日にオープン。大地の成り立ちから、変動する地球のダイナミズムを実感できる展示が圧巻です。
ジオパークガイドや体験プログラムなどもあるので、じっくり巡ってみてはいかがでしょうか。
Information
室戸世界ジオパークセンター
開館時間:9時~7時
住所:室戸市室戸岬町1810-2 室戸世界ジオパークセンター
問合せ先:0887-22-5161
バス駐車場:大型バス5台分あり
室戸岬
室戸岬は世界ジオパークに認定されている国の名勝。雄大な太平洋に突き出すように位置し、フィリピン海プレートの影響で今もなお隆起が続く、ダイナミックな地形が楽しめます。
弘法大師(空海)が修行したと伝わる御厨人窟(みくろど)があり、パワースポットとしても有名。マグマが地層に入り込んだあと「ビジャゴ巌」や海中から直立する2つの岩柱「夫婦岩」など、見どころ満点。
室戸海洋深層水を利用した健康増進施設「室戸海洋深層水体験交流センターシレストむろと」や「道の駅キラメッセ室戸・鯨の郷」、「室戸ドルフィンセンター」など、観光で立ち寄りたいスポットがたくさんあります。
Information
室戸岬
住所:高知県室戸市室戸岬町
問合せ先:室戸市観光協会 0887‐22‐0574
海の駅 とろむ
室戸岬漁港新港にある休憩スポット。
飲食・体験施設「室玄(むろげん)」があり、高岡漁港(室戸市南東部)や室戸岬漁港(室戸市南西部)で水揚げされたものをメインに使用しているそうです。
隣接して「室戸ドルフィンセンター」があり、イルカと触れ合える人気の施設となっています。ドルフィンスイムや餌やり体験などさまざまなプログラムがありますよ。
Information
海の駅 とろむ
住所:高知県室戸市室戸岬町3535-1
問合せ先:0887-23-2230
室戸ドルフィンセンター
開館時間:10時~17時、水曜休み
料金:2,200円~
※体験により異なる
住所:高知県室戸市室戸岬町字鯨浜6810-162
問合せ先:0887-22-1245
阿佐海岸鉄道の「DMV」を使って徳島~高知を旅してみるのもおもしろそうですね。予約なしでも座席が空いていれば乗車できますが、人数が多い場合は事前に団体予約・相談をしておきましょう。
また阿佐海岸鉄道では視察の受け入れも行っています。地域の新しい交通手段として導入を検討したい自治体の方、ぜひ問い合わせてみてはいかがでしょうか。
■取材協力
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