豪華仕様の貸切バスでVIPなバス旅行を楽しんでみよう!
以前、高速バスのシートプレミアム化や、豪華仕様のバスを使ったバスツアーが注目されているという記事を書きました。
少しお値段は高くなりますが、きれいで快適、ワンランク上のサービスが受けられると大好評。今後ますますプレミアムバスは注目を集めていくのではないでしょうか。
そこで今回は、豪華仕様の貸切バスを紹介する第2弾として、中国からVIP仕様のバス「オノエンスター」を輸入しているオノエンジニアリングと、現在そのバスを運行中のバス窓NETWORK BUSに取材してきました!
「中国製のバスなんてダメなんじゃない?」と思っているあなた!今すぐその認識を改めないと、時代に乗り遅れてしまいますよ。
国産バスメーカーにはない魅力やメリット、ユニークな仕様をじっくりご紹介しましょう。
プレミアムな乗り心地の観光バス「オノエンスター」
「オノエンスター」は、中国・ヤーシン(亜星=アジアスター)製の中型観光バスです。輸入・発売元は八王子にあるオノエンジニアリング。
2017年11月に第1号車がバス窓NETWORK BUS(バス窓.com)に納車され、「第2回バステクin首都圏」で紹介されるや否や、たちまち注目を集めました。
ヤーシンは中堅のバスメーカーで、ヨーロッパや中近東、オーストラリア向けにバスの製造・輸出をしている会社です。
今回の「オノエンスター」は、オーストラリア向けの右ハンドル車をベースに、日本の道路事情に合わせた仕様に変更して輸入。
製造中止になり、姿を消しつつある小型の観光バス(全長7m未満)に代わるものを探していたバス窓NETWORK BUSが、第1号車を2016年11月に導入しました。
「オノエンスター」は全長8.05m、車幅は2.46m、全高3.36m。小型バスの長さ7mよりも長いため、中型バス(9m)の区分になっています。ハイデッカータイプの大型観光バスと同じぐらいの車高があるため、眺望の良さが自慢です。
最大乗車可能人数は33名ですが、VIPな移動にこだわったバス窓NETWORK BUS希望により、2列シート×1列シート×6列で合計18座席とまさに贅沢なレイアウト。
大柄な男性でも足をのばしてゆっくりくつろげる仕様に仕上がっていました。
モノづくりは本当に日本が1番なのか?中国バスメーカーの実力
「オノエンスター」を輸入・販売するオノエンジニアリング、社長の小野さんにお話しをうかがったところ、中国メーカー約90社のうち、20社にアタック。そのうち、協力してもいいといってくれたのはヤーシン1社だったといいます。
日本は「車検が厳しい、仕様がめんどくさい、いっぱい売れない」。
ヨーロッパや中近東向けに1,000~2,000台規模で製造・輸出しているのに、日本向けに数台だけ製造するなんて考えられない。確かに、中国側からすれば、協力するメリットはまったく感じられませんよね・・・。
小野さんが海外に出て痛感したのは「日本のマーケットは世界から全然相手にされていない」ということだそう。
実は小野さん、JICA(国際協力機構)でボランティアもされていらっしゃいます。エンジニア(技術者)としてバスの修理やメンテナンスなどを海外の人たちに教えています。つい先日もカンボジアのラオスへ寄付されたバスのメンテナンスを教えるため、出かけてきたばかり。
「日本は中古のバスを寄付していたけど、中国は太っ腹で新車のバスをど~んと寄付してた(笑)。経済発展が目覚ましく、欧州向けにバスを開発・製造している技術力は目を見張るものがあります。
日本のモノづくりは世界で1番だとアグラをかいていると、この先、世界から取り残されてしまうかもしれません。
実際、ヤーシンのバス製造工場・研究所をバス窓NETWORK BUS社長の徳久さんと視察に行きましたが、スケールが全然違う。井の中の蛙だったと痛感してしまいました」。
以前、2階建てバスの新車が欲しかったはとバスが苦労して、スカニア・ジャパンと「アストロメガ」を共同で開発。なかなか車体を製造してくれるメーカーが見つからず、やっと応じてくれたのがベルギーのバンホールだけだったという話を思い出しました。
悲しいかな、日本は海外からはマーケットとして全然相手にされていないのは事実のようです。
【関連記事:2階建て大型観光バス(アストロメガ)貸切!箱根日帰りバスツアーに行ってきた】
観光バス「オノエンスター」のここがおもしろい!
国産のバスとは違う「オノエンスター」の魅力とはどんなところでしょうか?
「ひとつは、ユニークなスタイリングにあると思います」と小野さん。
ぴょんと飛び出したミラーが独特。全体的に丸みのあるフォルムは、国産バスにはない形です。
徳久さんも、旅行先のサービスエリアなどで駐車していると、バスを見ようと人が集まってくるとおっしゃっていました。
「もう一つは、VIP仕様ながら抑えた価格で購入できるところでしょうか。」
オノエンスターは、バス窓NETWORK BUSが選んだ黒のVIPレザーシートタイプ(2席×1席)と、薄いベージュと茶色のツートンレザー標準シートタイプ(2席×2席)があります。
黒のVIPレザーシートは6列、正席で22名まで設定できますが、シートに厚みと幅があるため、1列なくして19名乗りにするか、バス窓NETWORK BUSのように、最後部列もなくして18名乗りにするのがおすすめだそう。
ちょっと(足が太くて)わかりにくくて恐縮ですが、フットレストを出すと、かなりゆったりくつろげます。
ベージュ×茶色シートは7列、正席で33名まで設定できます。
VIPよりも2列多いですが、シートがすっきりしているので足元もゆったり。足載せ台もついています。
オプション仕様になりますが、トランクルームの扉はリモコンによる自動開閉式にすることも!
なかなか便利です。
海外メーカーのバス、気になるメンテナンスやアフターフォローは?
外国製のバスを購入する場合、一番気になるのはアフターメンテナンス。
ところがこのオノエンスター。メンテナンスが意外に簡単でお金がかからない仕様になってるんです!
バス窓NETWORK BUSが購入したオノエンスター、エンジンはアメリカ・カミンズ製の直4・排気量4.45リットル。ユーロ6に適合したものです。
ユーロ6は、ヨーロッパ連合(EU)が2014年に施行した自動車の新たな排出ガス規制。日本国内よりもさらに厳しい排出ガス規制をクリアしたものです。
小野さんは「中国製のエンジンもとてもいいものなんですが、日本のマーケットにはなかなか受け入れられないとことがあります。でもいずれは、エンジンも中国製を積んだオノエンスターにしていきたいなと思っていますよ」とおっしゃっていました。
実はこのエンジン、実にシンプルな構造。国産エンジンだと、純正の部品じゃないと交換できなかったりするんですが、ホースなどはホームセンターで売っている市販品を使用しているそう。
つまり、部品をわざわざ取り寄せする必要はなく、各バス事業者の通常メンテナンスで簡単に取り換えができちゃうんですって!凄い!!
もちろん、取り寄せしなくてはならない部品もありますが、メーカーから迅速に供給してもらえる体制を整えているので、心配はいらないそうですよ。
空調はデンソー(中国)、タイヤはブリッジストンなので、国内でも対応可。
ところで、ていねいなモノづくりに定評のある日本メーカー。外観も内装もズレや傷ひとつなく、きれいに仕上がってくるというイメージがありますが、中国製はどうなんでしょう?
「細かいつくりを見ていくと、確かにちょっとアバウトな仕上がりになっているところが多々あります(笑)」と小野さん。
徳久さんも「バックライトカバーの片側だけ、横線がいっぱいはいっちゃってるんだよね~。やっぱりちょっと雑なところがあるかも(笑)」とおっしゃっていました。
中国からバスが日本に到着した後、納品するまで、小野さんのほうできちんとチェック。仕上がりがいまいちのところは、きちんと手直ししてから引き渡しをしているとのこと。
運行後のメンテナンスや修理なども、オノエンジニアリングで引き受けてくれるので安心ですね。
MT車だけではなく、フルオートマティック車もあるオノエンスター
バス窓NETWORK BUSが購入したものは、トランスミッション6速MT車。
これとは別に、アリソン6速ATを積んだタイプも選択できます。
クラッチも変速レバーもなくてすっきり!ドライバーさんの負担も軽減されますね。
サスペンションは独立懸架式空気ばね(前)と車軸式空気ばね(後)。実はニーディングするところを見たんですが、めちゃめちゃ早くてびっくり!!
非常口の考え方が日本と違う!?天井から脱出できるオノエンスター
外国製のバスを見ると、日本のようにバス側面に非常口がついていないことが多いと思いませんか?
たとえば、「シーガル幕張」はメルセデス・ベンツ・シターロGですが、非常口はなく、窓を割って逃げるタイプ。
ヤサカ観光のアストロメガは非常口がちゃんとついてました!
ちなみに、オノエンスターは標準仕様ではついていません(オプションで付けることも可能)。窓を壊して逃げるタイプです。
バスが横転するような事故が起きた場合、非常口がついている側が下になってしまうと逃げられません。このため、天井から逃げられる構造になっているそうです。
バスの後方よりの天井部分についている通気口ですが、取り外し可能。いざ、というときに、ここを開けて車外に逃げられるそう!こんなところも、日本とは違う発想ですね。
オノエンスターの運転しやすさは?お客さんの乗り心地は?を聞いてみた!
そしてもう一つ大切なことは、ドライバーさんたちの評判。
徳久さんは「やっぱり外国製ということもあり、初めてハンドル握るときは緊張するみたいですね」とのこと。
ミラーが飛び出しているのをうっかり忘れて、ぶつけてしまい、壊しちゃったドライバーさんもいらっしゃったとか。
狭い道路が多い日本の交通事情を考えると、確かにこれは気を付けないと(笑)。
ただお客様からは「乗り心地がいい」、「ゆったり移動できて疲れない」など大好評だとか。
通常のバスよりも少し値段が高めですが、ぜひ乗り心地の良さを体感していただこうと“お試し運行中”は、冷やしたミネラルウォーターをプレゼントしたり、蒸しタオルサービスを実施したところ、とても喜んでいただけたそうです。
オノエンジニアリングにはすでに、同じ仕様のVIPバス(18名乗り)をもう2台と通常仕様の中型バス1台(25名乗り)を発注済で、3月~4月ぐらいから運行予定。楽しみですね~。
ちなみに、オノエンスター。夜になるとバスを装飾するライトがとてもきれいだそうです。街中を走っている姿をみかけたら、ぜひ、写真を編集部までお送りください!
このVIPバス、トランクルームは貫通式で2本あるので、ゴルフコンペの送迎にもおすすめ。トランクルームには、ゴルフバッグを12本収納可能。
バス窓NETWORK BUSが購入したオノエンスターは、バス後部座席部分を荷物置き場スペースにしている(冷蔵庫が置いてある)ので、ここにもさらに3本は載せられるとのこと。
さて、いかがでしたでしょうか?外国製のバスもちょっとおもしろそうだな、と思ったバス事業者さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
オノエンスターは中型バスだけではなく、大型観光バス(ハイデッカー・スーパーハイデッカー)もあります。VIP仕様でマイクロバスないかな?という事業者さんには、ミニバスタイプ(6m/7m/8m)もあるそうですよ。
「こんな仕様にしたい!」という要望がある場合は、小野さんが相談にのってくれるはず。
ちなみに徳久さんもシートのステッチ色が赤だったのを黒にしてもらったとか・・・。
個性的なバスでお客さんのニーズをつかみたいと考えているバス事業者さん、ぜひ、導入を検討してみては?
バス窓NETWORK BUS<小型VIPバス PREMIUM>の座席表
●正席18席(補助席なし)
(バスの装備:TV・DVD・マイク・冷蔵庫・温蔵庫・総革張りワイドシート)
■取材・撮影協力
オノエンジニアリング
http://onoen.net/
東京都八王子市大塚649-7
バス窓NETWORK BUS(バス窓.com)
神奈川県相模原市緑区久保沢3-11-7
メモリー観光バス
東京都東村山市久米川町5-1-1
※取材日当日、オノエンジニアリングの工場見学にいらしていました。足モデルでご協力いただき、ありがとうございました!
■おまけ
実はオノエンジニアリングの小野さん、「機動警察パトレイバー」の実写版映画関連の特装車両を手掛け、映画にも出演しているんです。
しかも取材当日、バスマニアならお宝ともいえるバスを発見!
編集部が趣味で撮影した小野さん自慢のバスはこちら>>
バス会社の比較がポイント!