大型観光バスの安全性能がさらに進化!三菱ふそうの2019年モデル
三菱ふそう・トラックバス株式会社の大型観光バス「エアロクィーン」「エアロエース」が、2019年新型モデルを発表!2月21日にパシフィコ横浜でプレス向けの発表会がありました。
2017年5月に全車に新型8速AMT”ShifoPilot”(マニュアル車でありながら、ギアチェンジをオートマ化)を搭載し、乗客もドライバーも快適&ラクラクを実現するモデルチェンジが行われたばかり(詳しくは「プロドライバー納得の仕上がり!大型観光バスで初めての8速AMT採用」を参照ください)。
今回の新型モデルは、こちらをベースにさらなる安全性の向上と法規対応を先取りした改良となっています。
今回の大まかな改良ポイントは以下の4つ。
- 安全装備の充実
- 車載故障診断(J-OBD II )
- バスのフロントデザイン
- トランクルーム
それではさっそく、詳しく見ていきましょう。
三菱ふそう新大型観光バスの改良ポイント(1)安全装置の充実
国産大型観光バスで初めての安全装備「アクティブサイドガードアシスト」
まず、今回一番の注目ポイントとなる「安全装置」は、「アクティブ・サイド・ガードアシスト(Active Sideguard Assist)」機能です。
ドライバーの死角となりやすい、車両左側をモニターで監視。歩行者や自転車、バイクなどがバスの左側をすり抜けてくるのを感知し、警告を出すというものです。
大型バスやトラックなどの商用車が起こす死傷事故の多くは、歩道や交差点で起きているとか。最近はロードバイクなどスピードの出やすい自転車が増え、左折時に巻き込み事故がさらに心配になっているといいます。
そこでバスの左側面(左後輪前)にミリ波レーダーを設置。
走行中、歩行者や自転車、バイクなどが車両左側に接近すると、運転席左側とインパネ左(運転支援システム表示時)にある警告ランプがが黄色に点灯して知らせます。
さらに、ハンドルを左に切る・左折ウィンカー操作を行うと、赤色ランプが点灯。ドライバーシート左側のバイブレーターが作動してドライバーに警告し、左折巻き込み事故を未然に防ぐ機能になっています。
健康起因による緊急事態に備えた「ドライバー異常時対応システム」
バスドライバーが運転中に意識を失い、起こしてしまう事故のニュースが絶えません。国土交通省が2018年に発表した「ドライバー異常時対応システム」についての資料によると、ドライバーの異常時が原因とみられる事故後が年間200~300件発生しているといいます。
そこで国土交通省では、「押しボタン方式(運転手もしくは乗客がボタンを操作)」と「自動検知方式(システムがドライバーの異常を検知して停止)」で、自動でバスが停止するシステムについてのガイドラインを策定しています。
このシステムを搭載しているバスには、下記のようなステッカーを提示。利用者に安全性能の高さをアピールできるようになっています(現在、認可申請中)。
三菱ふそう2019年新型モデルでは、ドライバーに何らかの異常が発生した場合、車両を緊急停止させるスイッチを運転席に1つ、客席の前方・左右上部に設置しています。
こちらのスイッチを操作するとまず車内に警報音(間欠)が3.2秒鳴り響き、運転席、客席のスイッチ、車内5か所にある警告灯が点滅。車外ではハザードランプが点滅、ホーンが連続で鳴り、ブレーキ灯が点灯して異常事態を知らせる仕組みです。
3.2秒の間にドライバーがキャンセルボタン(非常ボタンと同じ)を操作すれば、非常ブレーキは操作されません。この3.2秒という時間は、国土交通省やバス事業者などの間で検討し、決めた基準だそうです。
ドライバーがキャンセルしなければ、0.25Gというブレーキが作動し、バス車両は緊急停止。このシステムが作動したことを、バスコネクト(R)を通じて運行管理者へ緊急連絡が素早く伝わります。
バスコネクト(R)は大型トラックではすでに対応済の機能で、バスの運行情報(車両位置・軌跡・安全運転・燃費等)をインターネットを通じ、リアルタイムでバス運行管理者へ提供するシステム。エアロエース、エアロクィーン共に標準装備されているので、購入後にすぐに利用できます。
安全運転はもちろん、業務効率化もアシストする「バスコネクト(R) 」
バスコネクト(R)は、24時間365日、バス車両の不具合を見守り、異常を検知したらその場で通知してくれます。また、その不具合内容は三菱ふそうへも通知。故障診断によるタイムロスがなく、バスの早期稼働をアシストします。
バスコネクト(R)が供えているのは以下の6つ。
- 車両の現在位置・軌道情報
- 車両管理
- 遠隔診断(車両)
- 安全運転情報
- 燃費情報
- 緊急連絡(EDSS作動時、ABA4・2次制動作動時)
このうち1~5はトラックコネクト(R)に装備されていたものと同じで、新しくバス用に6つめの機能「緊急連絡」が加わっています。
バスコネクト(R)は、バスに標準装備されているデジタコとも連動可能。デジタコデータはそのまま専用のWEBぺージへ送信されるので、業務効率化が図れます。
こちらはエアロエース&エアロクィーンに標準装備されているので、システム取り付け作業は不要。各バス会社のパソコンや運行管理者のスマートフォンへ専用ソフトをダウンロードすれば完了です。
燃費意識の向上、安全運転の意識向上につながるとともに、荒天時のトラブル対応や安全装置作動時の緊急対応にも素早く対処できます。
この他装備されている注目のセーフティ機能は?
三菱ふそうの大型観光バスで、事故を未然に防ぐために備えているトータルセーフティ機能は以下の6つ。
- 完全停止型の衝突被害軽減・回避ブレーキ「ABA4(アクティブ・ブレーキ・アシスト4)」
- ドライバーの注意力低下をモニターする「アクティブ・アテンションアシスト」
- 渋滞時に前走車の動きに合わせて自動停止・発進する機能「プロキシ三ティー・コントロール・アシスト」
- 車両の安定性を保つ「ESP(R)(車両挙動安定装置)」
- 強い制動力を発揮する補助ブレーキ「液体式リターダー」
- 車線逸脱を警告する「LDWS(運転席バイブレーター警報付)」
1つ目の衝突被害軽減・回避ブレーキ「ABA4(アクティブ・ブレーキ・アシスト4)」は、前回のモデルで採用された「ABA3」をさらに進化させたもの。特に難しいとされている、前方を横断する歩行者の検知機能に磨きをかけ、警告と減速操作を行うものです。
さらに5番目の「液体式リターダー」は「欲しい」というバス事業者からの要望が高かったということで、今回から全車両に標準装備となっています。「液体式リターダー」は、液体を活用した補助ブレーキ。ジェイクブレーキやシフトダウンブレーキと連動することで、安定した車両制御ができるというものです。
この他、3点式シートベルトを上級グレード・プレミアムでは標準化するなど、きめ細かな対応がなされています。
三菱ふそう新大型観光バスの改良ポイント(2)車載故障診断(J-OBD II )
車載故障診断(J-OBDⅡ)とは、すでに乗用車で導入されているもの。確実にスムーズに点検整備を行えるようにする、「電子制御装置と接続された高度な車載式交渉診断装置」の略称です。
年々商業者も安全・環境性能が向上。新技術の導入で電子制御装置の普及が進んできていることを受け、大型トラックやバスなどについても法整備がすすめられています。
三菱ふそうでは、この法整備に対応したバスコネクト(R)を今回より導入。バスの電子制御状態を見える化しました。
三菱ふそう新大型観光バスの改良ポイント(3)バスのフロントデザイン
今回、パシフィコ横浜で展示されたのは「エアロクィーン」「ローザ」。そして「エアロエース」です。
写真では少しわかりにくいですが、新型LEDヘッドランプ、LEDフォグランプ、そして「ふそうブラックベルト」デザインと呼ばれる特徴的なラインが導入されています。「ふそうブラックベルト」はすでに、2018年発売の「ローザ」に導入されていましたね。
新しい「FUSO」ロゴが際立ち、今後の三菱ふそうブランドのアイデンティティを表現。「三菱ふそうバスの顔」として親しまれていくことでしょうね。
三菱ふそう新大型観光バスの改良ポイント(4)トランクルーム
大型観光バスを貸切利用する旅行会社やお客様にとって関心が高い情報のひとつ、トランクルームの収納力。今回の改良でトランクルームを均等3スパンにし、スーツケースなどを効率的に積めるようになったそうです。
エアロエースの夜行線モデルを除き、標準装備。空港送迎や貸切バスで利用するタイプは、大容量トランクルームを備えたものとなります。
今回は残念ながら撮影できませんでしたが、近く試乗会が催される予定です。その際にばっちり撮影してきますので、お待ちくださいね。
大型観光バスの安全性能をレベルアップ!三菱ふそうの2019年モデルまとめ
今回紹介した三菱ふそうの新大型観光バスモデルは、2019年4月より発売開始です。発表会では「血のにじむような安全対策、業務改善に取り組むバス事業者さんをアシストする企業でありたい」という発言がありました。
すべての機能を解説することはできませんでしたが、大型商用車のイノベーションに先鞭をつける三菱ふそうとして、これからも注目していきたいと思います。
■取材・撮影協力
三菱ふそうトラック・バス株式会社
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