日野自動車の歴史でたどる、日本のバスの進化!
さて、バスファンにはたまらない博物館。
「日野オートプラザ」を探訪する企画第2弾!
前回は屋外に展示されている車両をご紹介しました。
詳しくは「穴場のお出かけスポット、日野で発見!」をチェック!
今回はいよいよ屋内展示を紹介しましょう!
まずは1階のエントランスホールにある、トラックをご紹介します。
古くて新しい!昔のバスに感動
こちらは国産トラックの草分け的存在といわれる、1917年製造「TGE-A型トラック」のレプリカ。
エンジンなども当時のものを忠実に再現しているとか・・・。
こちらもやはり、内装などが木でできています。
なんとも味のあるトラック。
実は日野自動車、前身は「東京瓦斯電気工業(とうきょうがすでんきこうぎょう)」という会社で、大正から昭和初期にかけて鉄道車両や自動車、航空機などの製造を手掛けていた会社でした。
その後、バス・トラックの製造部門は、現在の日野自動車といすゞ自動車に引き継がれ、今に至っています。
「TGE-A型トラック」は、アメリカ製のトラックを参考に、独自設計した水冷直列4気筒ガソリンエンジン搭載4.4ℓ排気量のもので、軍用保護自動車としてロシア革命のシベリア出兵時にも大活躍。
2008年の経済産業省「近代化産業遺産」として登録されています。
さあ、エレベーターを使い、2階の展示室からじっくり見ていきましょう!
2階にはカフェやトミカの働く車「ミニカージオラマ」も!
エレベーターを降りると、すぐ正面に受付。
右手にはカフェ「シャノン」があり、疲れたらゆっくり休憩もできます。
受付の脇にある「ミニカータワー」には、バスやトラックのミニカーがずらり展示!
その場で購入することもできるそうです。(詳しくは受付まで)
フレンドリーギャラリーを左へ進むとまず目を引くのはトミカタウンの「ミニカージオラマ」です。
ここでは働く車を立体的に展示。
さらに進むと時代ジオラマ模型があり、かつて活躍した日野自動車の車両を1/10スケールで再現しています。
手前のトラックは1946年産の「T10+T20」です。
戦中の人員輸送車の部品を流用して、鉄道の貨車1台分の荷物が積めるように設計されたものです。
トラックの運転席に座るのは、東京瓦斯電気工業の家本潔工場長、手前に立っている人物は大久保正二社長だそうです。
そして、こちらはトレーラートラックをベースにして開発されたバス。
「T12B+T26」で1947年製。
セミトレーラー式なので、意外に小回りがきき、大勢の人を運ぶのに最適な形でした。
1950年頃まで製造され、その後はボンネットバスに引き継がれていきます。
ボンネットバス「BH10」はこの後、1階メイン展示フロアで実物をみることができますよー。
航空エンジンも作っていた日野自動車!移動しながら歴史をたどれるスロープギャラリー
模型展示の奥にはスローブギャラリー。
時代を彩ったトラックやバスの歴史を、貴重な写真とともにわかりやすく紹介しています。
そして、ダカールラリーの様子を映像で紹介するコーナーがあり、その向かい側には・・・・。
なんと、航空機に関する展示が!
そうです。日野自動車の前身である東京瓦斯電気工業は、1927年に日本で初めて、航空エンジンの設計製作を行った会社でもありました。
1934年には東京大学航空研究所の設計による「航研機」の製造を引き受け、1938年5月、日本では唯一の絶対飛行世界記録を樹立。
約402㎞のコースを29周し、約11,651km飛んだとあります。
その当時の「航研機」の1/5サイズ模型が展示室の吹きぬけに飾ってあります。
いまの日野自動車の基礎を築いたフロンティアたち
スロープギャラリーを降り、1階の展示フロアへ。
スロープの壁面では、バスの歴史が豊富な写真とともに紹介。
時代背景とともにバスがどのように進化していったのかがわかります。
1階まで降りると、吹き抜けになっている展示スペースの脇に資料室があります。
こちらでは、現在の日野自動車の礎を築いた、東京瓦斯電気工業初代社長である松方氏、技術者の星子氏の業績について知ることができます。
また、1997年パリダカールラリーで優勝、2位、3位を独占したときのトロフィーも展示。
モータースポーツファンにはたまらないお宝がザクザクですね!
日野自動車歴代の車がずらり!今みても美しく魅力あるデザイン
さて、いよいよ吹き抜けのある1階展示ルームへ。
中央には先ほど、2階に模型が展示されていたボンネットバスBH15 があります。
こちらは現在のバスの礎ともいえるタイプ。
高度成長時代、人々の足となり、生活を支えていたものです。
展示されているものは1966年式で、日野ボンネットバスの最終生産車両となりました。
なつかしくも味わいのある顔。
これ、何かに似ていると思いませんか?
そうです!剣道の「面」!!
このフロントデザインがまさに日野自動車ボンネットバスの「顔」として、親しまれてきたものです。
乗車定員数は55名。
実際に乗車して中を見学することもできます。
いまはもう見かけなくなっている段差の高い階段ステップと古めかしい料金箱。
床は板張り。
座席は横並びシートでつり革も懐かしい感じ。
出入り口がいまよりも狭く、赤ちゃんを抱いたお母さんや足の不自由な人は
乗降りが大変だったことでしょう。
アナログな計器類がいい感じ。
ハンドルがとても細く、今みたいにパワステではなかったので回すのが大変そうですね。
後ろ姿もかわいらしい!
非常扉が真後ろにあるのがボンネットバスの特徴ですね。
日野自動車って普通の乗用車も作っていた!しかも、格好いい!!
お次に紹介するのは1953年製造「日野ルノー4CV」です。
フランスルノー公団と技術提携し、部品輸入による組み立て生産を開始。
1957年には完全国産化を果たしたそうです。
自動車好きの人には有名な話。
ちなみにオットに聞いたら、良く知っていました。
リアエンジン、リアドライブ(RR)方式で広々とした室内と低燃費が魅力ということで、タクシーによく採用されていたそうです。
そしてお隣は1961年製造「コンテッサ900」。
最高時速110km/h出る水冷直列4気筒エンジン。
国内初というオートチョークで、日野自動車独自のスタイリング。
1963年に鈴鹿で行われた本格的なオートレース、「第1回日本グランプリ」のツーリングクラスで優勝しています。
そして、1962年製造「コンテッサ900スプリント」は、イタリアのジョバンニ・ミケロッティ氏のデザイン。
どうです、この美しいデザイン!
内装も豪華で「コンテッサ(=伯爵夫人)」という名にふさわしいエレガントな仕様ですね~。
第44回トリノモーターショーで、翌年のニューヨークショー等の海外のモーターショーで展示され世界の注目を集めた後、第10回東京モーターショーで国内初公開されました。
でもって、わかりますか?
フロント部分にある「HINO」の下の丸いマークの中。
カタカナで「ヒノ」って書いてある!!
面白いな、イタリア人・・・。
残念ながら市販はされず、幻の名車となった1台。
この車だけでも見に来る価値あり!です。
1965年製造「コンテッサ1300クーペ」も同じくミケロッティ氏のデザイン。
日野自動車が唯一、自社開発した乗用車です。
イタリアのコンクール・デレガンスで第5回、第6回とも賞を受賞しています。
そして、こちらの昭和の香りたっぷりな三輪車は「ハスラー」。
国内で三輪車全盛だったのが1958年。
三井精機工業(株)製造の小型三輪トラックや軽三輪トラックを販売していた日野自動車がつくったもので、東南アジアでタクシー用として活躍したタイプです。
こちらは「日野コンマースPB10型」。
500kg積みライトバン(展示車両)のほか、10人乗りワゴンと11人乗りミニバス、病院車もラインナップしていたそうです。
今でいえばミニバス(コミューター)タイプですね。
FF(フロントエンジン・フロントドライブ)技術は当時としてはまだ珍しく、先駆者的なモデルになっています。
また、床が低いので、室内が広々としているのが特徴です。
日野自動車が環境問題に取り組んだエコな乗り物と未来のバス
最後は20011年東京モーターショーに参考出展した車。
EV走行を可能にした「日野デュトロハイブリッド」をベースにしたプラグインハイブリッド車。
世界初公開となる商用EV(電気自動車)のコンセプトモデルです。
外部電源からバッテリー充電ができるとともに外部給電機能により、バスから電力の供給ができるというもの。
災害時に避難所等で活躍できます。
現在は商品化をめざし、開発が進んでいます(2017年の東京モーターショーでトヨタ自動車との共同開発で紹介)。
上の写真は2013年10月に発表された中型バス「日野メルファ」をベースにしたプラグインハイブリッドバスです。
ハイブリッドシステムと大容量のリチウムイオン電池を組み合わせたシステムで、EV走行とハイブリッド走行が可能な上、ディーゼルエンジンによる長時間の給電機能を備えているバス。
災害時には、ディーゼルエンジンが発電した電力供給を行ったり、搭載したバッテリーからも供給可能です。
普段はコミュニティバスやスクールバスとして活躍し、いざというときには災害エリアの早期支援活動にも役立てることができる、まさに一石二鳥、三鳥のバスですね!
上の写真が「日野デュトロハイブリッド」のエンジン。
世界で初めての量産ハイブリッド車(屋外に展示されているHIMRバス)を進化させたもので、電池はトヨタのハイブリッド車と共通化することで高性能とコスト低減を実現しています。
2011年にはモデルチェンジし、モーターのみでも走行できるシステムになっています。
「働く車」は、私たちの「暮らしを守る車」へさらなる進化系がここにありました。
戦前~黎明期、そして現代へ受け継がれ、進化し続ける日野の技術
メイン展示フロアにはまた、昭和から平成にかけて開発された日野のエンジンが展示されています。
上のエンジンは「DS11型」、1952年に戦後初めて開発されたトラック用のものです。
7リットルの排気量は、当時としてはかなり馬力のあるもの。
耐用性を重視した太いクランクシャフト一対鋳造バランスウエイトが採用されています。
DS120型エンジンは、名神高速道路開通を控えた1963年に開発されたもので、水平対向12気筒320PS。
高速長距離走行に耐える高速バスのニーズに応えたものです。
この他、「赤いエンジン」シリーズとして開発された「EF100型エンジン」や、世界で始めてコモンレール式電子制御高圧燃料噴射システム(従来のディーゼルエンジンに比べ、よりクリーンで低騒音、低振動、高出力エンジンにした画期的な技術)を採用した「JO8C」エンジンなど、ここではその変遷をたどることができます。
そして、メイン展示フロアの奥には黎明期のエンジンを展示するスペース。
ひときわ目をひくのが戦前、1937年につくられた「ちよだEC型エンジン」です。
東京瓦斯電気工業製で、軽戦車用として開発されたものではないかといわれています。
航空エンジンの開発技術が随所に確認できる空冷式ディーゼル。
特徴的なのは円形の中央に突起を設けたトロイダル型燃焼室(空気と燃料の混合をよくする渦流を起こすようにしたもの)で、それを2つ合わせにしているところが大変ユニークなものだそう。
その他、1920年に日本陸軍がフランスのグノーム・ローン社からライセンスを買取り、1920年から東京瓦斯電気工業で生産を始めた「ル・ローン80馬力」エンジンも展示。
この後、「神風」や「天風」などの航空エンジンが開発されていきました。
東大航空研究所との共同開発で1938年に制作した、航研機のエンジンと同型の液冷V12型エンジンも展示されています。
そして、展示室の壁面に飾られている写真に興味深いものが・・・。
バスの後ろに荷物を積んだトレーラーをけん引しているタイプ。「ちよだST型 バストレーラー(1932年)」です。
今年の6月、クロネコヤマトでおなじみのヤマト運輸が岩手県北自動車とコラボし、路線バスを活用した宅急便輸送「客貨混載(きゃくかこんさい)」という新しいサービスをスタートさせ、話題になっていました。
この発想はまさに、この写真の「バストレーラー」ですよね!?
高齢化や過疎化が進む中山間地域などで、地域の足として欠かせない路線バスの運行維持と長距離トラックドライバー不足を解消する画期的なアイデアとして大変注目を集めています。
岩手の他に宮崎交通(宮崎市)などでも10月からスタートしています。
古きを知って新しきを知る、まさに「温故知新」。
まだまだ、過去に学ぶべきものは残っていると感じました。
さて、2回に渡りご紹介した「日野オートプラザ」。
いかがでしたでしょうか?
車好きの方はもちろん、飛行機の歴史に興味がある方にも大変興味深い展示がたくさんありましたね!
日曜がお休みということもあって、お仕事のある方はなかなか足を運びにくいかもしれませんが、機会があったらぜひ、訪ねてください。
もちろん、車好き、バス好きのお子さんにもばっちり楽しんでいただける内容になっていますよー。
こちらは駐車場もあるので、ドライブやデートコースにもOK。
もちろん、貸切バスの旅の立ち寄り先のひとつとしてもおススメしたいスポットです。
≫新型コロナウイルス感染症対策「リエッセⅡ」「日野セレガR」の換気性能について
≫新型コロナウイルス感染症対策「日野セレガ」の換気性能について
■日野オートプラザ(入館料無料)
東京都八王子市みなみ野5丁目28番5号
日野自動車21世紀センター
Tel:042-637-6600
※団体の場合は必ず予約を!
<開館時間>
10時~16時(入館15時まで)、第1・第3・第5土曜日と日祝日は休み。
詳しくは開館日カレンダーをホームページで確認してください。
<アクセス>
①JR中央線「八王子駅」もしくは「西八王子駅」からタクシーで約15分
②JR横浜線「八王子みなみ野駅」から京王バス04系統で約5分、
「みなみの五丁目南」停留所下車徒歩約5分
③京王線「めじろ台駅」からタクシーで約10分
④自家用車もしくはバスでお越しの場合は、
中央自動車道・八王子ICから国道16号線を利用し、約30分程度。
※駐車可能台数は14台分になっています。
バスで来館の場合は必ず電話で確認のこと。
[取材・写真協力:日野自動車]
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