バス会社も他人事じゃない。絶対に知っておきたい知的財産のハナシ
バス会社とも関係が深い!?知的財産とは
知的財産と聞くと、なんだか難しそうな話題だと感じる人も多いのではないでしょうか。
世間を騒がせる知財ニュースも、任天堂とかキヤノンとか小野薬品とかいった大企業メーカーが多く、「バス会社には無縁の話題」と思うかもしれません。
でも知的財産はバス会社や中小企業、個人事業主にも関係があるものなんです。
まずは知的財産のなかでもバス会社と関わりのある商標権、意匠権、特許権について解説していきます。
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商標
商標とは、いわゆるネーミングやマークのこと。これらネーミングやマークを守るための権利が商標権です。具体的には、社名や会社ロゴ、ブランド名などを守ってくれます。
商標(ネーミング・マーク)と区分(サービスカテゴリ)をセットにし、指定商品・指定役務(具体的な商品内容・サービス内容)を書き添えて特許庁の審査に合格すると商標権として認められます。
権利期間に定めはなく、半永久的に権利を持ち続けることが可能です。
意匠
意匠権は簡単に言うと、物品・建築物・画像といった工業上利用できるデザインを守る権利です。絵画のような芸術作品は意匠権の保護対象ではありません。
身近なところではバルミューダの家電が意匠権で保護されています。
権利期間は特許庁への出願日から25年となっています。
特許
特許権は発明、つまり新しいアイデアを保護してくれる権利です。iPS細胞や、フリクションボールペンの文字が消える仕組み(熱変化で色が変わるインク)などが特許権を取得しています。
特許は出願した日から最大で20年間権利の保持が可能。
権利を取るメリットは?
さきほど紹介した商標権、意匠権、特許権はいずれも、出願内容の独占使用を認める権利です。
そのため権利を取得すると
- パクリや海賊版の防止になるし、差止請求も可能になる
- ブランドや商品の信頼度があがる
- ライセンス契約など協業の幅が広がる
- 他人に権利を取られ、差止請求を受ける心配がなくなる
といったメリットが得られます。
特に、他人に権利を横取りされて「商標を使うな」とか「ライセンス料を支払え」とか言われなくなるというのは重要なメリット。「〇〇バスなら丁寧で安心」といった評判=ブランドイメージをしっかり守ることができるんです。
実際にバス会社が持っている知的財産権の例
では実際、世の中のバス会社はどんな知的財産権を保有しているのか?詳しく見ていきましょう。
商標
まずは全てのバス会社に関係のある知財・商標権について。具体的な例を紹介していきます。
レスクル株式会社
貸切バスの達人に参加しているバス会社も、しっかり商標権を取っています。
レスクル株式会社は「レスクル」という名前で権利を取得(登録5973874)。区分は第39類で、指定役務も下記のように、しっかりバスや旅行に関する内容です。
バスによる輸送,物品及び乗客の輸送,車両による輸送,自動車の運転の代行,駐車場の提供,駐車場の管理,自動車の貸与,企画旅行の実施,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介又は取次ぎ
第39類は輸送、旅行の手配に関する区分で、バス会社が商標権を取るならまず検討したいところです。
はとバス
はとバスは、会社の規模や事業の幅も相まって多くの商標を取得しています。
そのなかでも会社のロゴは、HATO BUSの文字が入っているものと入っていないもの、2パターンで様々な区分を取得しています。
【ロゴ+文字ありタイプ】
- 登録2449932…第25類(被服)
- 登録2421077…第10類、第18類(耳かき/かばん類)
- 登録2385673…第8類、第11類、第14類、第24類(手動工具類/加熱器具・調理器具/食器など/織物製品)
- 登録5486329…第35類(広告,職業のあっせん)
- 登録5504401…第16類、第20類、第21類、第28類(紙製品・文房具類/クッションなど/ 化粧用具など/おもちゃ類)
【ロゴだけタイプ】
- 登録3177456…第37類(自動車の整備又は修理)
- 登録3089829…第39類(バスによる輸送など)
- 登録5404934…第39類(鉄道による輸送など)
- 登録5404932…第37類(自転車の修理など)
- 登録5404930…第36類(金融、保険、不動産の取引)
- 登録5404928…第35類(広告,職業のあっせんなど)
このように、同じ商標(ロゴ)でも区分を分けて出願する理由は2つあります。
ひとつは商標登録の費用が区分数に比例する特性から、必要になったタイミングで区分を都度追加しているパターンです。もうひとつ、分けて出願すれば万が一拒絶理由通知をもらったとき、無事な出願は早々に権利化できるという理由もあります。
また、登録3089829と登録5404934が同じ第39類ということを不思議に思う人がいるかもしれませんね。
これは、出願済の商標に対し区分や指定商品・指定役務を追加する(権利範囲を広くする)ことはできないため。権利範囲を広げるためにはこのように、別途商標出願をしなければいけないんです。
会社ロゴや社名以外にも、「東京いちょう回廊」(登録5659826)のようなツアーコース名も一部、商標権で守っています。ちなみにこちらの商標、区分は車両での輸送に関わる第39類と宿泊施設の提供などに関わる第43類が選択されています。
意匠
実は、意匠権を持っているバス会社はとても少ないです。
例えば自動車メーカーや家具メーカーなら、「独自のデザインをパクられないようにするべき→意匠権でデザインを守ったほうがいい」となります。
一方、バス会社は車両を自社販売するわけではありません。車体に会社ロゴを描くことも多いですが、ロゴは基本的に商標権で守ったほうがいいので、やっぱり意匠権を取る必要性は高くないんです。
とはいえ車体デザインもバス会社を象徴するものですから、一部企業は意匠権で権利化をしています。
例えば大阪シティバス株式会社は、2024年現在大阪市内を走っている、緑×白×青の車体デザインを意匠権で守っています。※画像の赤色以外の部分が、意匠登録を受けようとする部分です。
HPを見た感じ、力を入れてリニューアルをしているようですから、その分オリジナリティを大事にしたいという気持ちが強いのかなと思われます。
特許
三菱ふそうトラック・バス株式会社のような”バスを作る会社”ではなく、貸切バスの達人に参加しているような”バスを運行する会社”が特許を持っている例もいくつかあります。
みなと観光バス株式会社
この特許は簡単に言うと、運転手の状態をチェックすることで、より健康で安全なバス運転ができるようサポートしていく運行管理システムです。
みなと観光バス株式会社は運転手の健康管理を非常に重要視している会社で、IoTによる独自のバス安全運転支援システムを開発しています。
参考:IoTによるバス安全運転支援システムの開発が、社会を安全にする | 京都産業大学
ジェイアールバス関東株式会社
こちらは簡単に言うと、乗務員が安全にトランクの荷物を出し入れできるようにした、という内容の特許です。
大型バスなどに備わっているトランクは、図のように扉を開くため、乗務員が荷物を出し入れするとき、扉のへりにぶつかることがあります。ただトランク扉はバスの車体側面の一部でもあるため、扉の下縁にクッションをつけるのは簡単ではなかったのです。
そこで工夫をこらし、トランク扉の下縁にガード器具を取り付けた、というのがこちらのアイデアです。
バス会社も社名を商標登録するべき?
結論から言うと、バス会社も社名被りや商標の横取りを避けるために商標出願をしておくのが安心です。
他人に取られた商標を奪い返すのは、出願するとき以上に手間もお金もかかります。
とはいえ権利化にも、権利を維持するためにもお金がかかるので、まずは知的財産の専門家である弁理士に相談するのが良いでしょう。
初回相談無料!という特許事務所も多いですよ。
商標出願にかかる費用
商標出願にかかる金額は、自分で出願をするなら3万円~、プロに代行してもらうなら14万円~が相場となります。
自力で出願するのはとても安価ですが、120%の効果を発揮してくれる権利を取るには専門知識が必要なので、基本的にはプロにお願いするのがベター。
なお商標出願にかかる費用は、取得する区分数に応じて高くなります。加えて、権利を維持するためにもお金が必要なことに注意しましょう。
商標権をとる方法は?自分でもできる?
商標権を取るまでのステップは、大きく4段階に分けられます。弁理士に依頼をする場合は、1の調査~3の審査結果対応をおまかせできます。
- 他人の商標を検索・調査する
- 出願書類を特許庁に提出する
- 審査結果に対応する
- 権利維持費用を納付する
もし自分で出願をするなら、こちらの記事を参考にしてみてください。
なおバス会社は、輸送や旅行の手配に関係する区分である第39類を中心に商標出願するのが一般的です。とはいえどんなサービスにそのネーミング・マークを使うか?によって取るべき区分も指定役務も変わって来るのでよく吟味してみてください。
商標の区分って何?役割・選び方・注意点まとめ【知財タイムズ】
出願から権利化までにかかる期間は?
出願してから権利化までにかかる期間は、特許行政年次報告書2024年版によると平均7.3ヶ月。
早期審査という仕組みを使えば、審査結果を待つ期間を3~4ヶ月短縮することが可能です。
なお早期審査は全ての出願に適用できるわけではなく、緊急で権利化しないといけない事情があるとか、「類似商品・役務審査基準」に載っている指定商品・指定役務のみで出願しているとか、一定の条件を満たす必要があります。
商標の早期審査をするメリット・デメリット、申請時の注意点を解説【知財タイムズ】
迷ったら、知的財産のプロ・弁理士に頼ろう!
ここまで読んで、なかには「ひょっとして自分たちも、このネーミングやロゴを商標出願したほうがいい……?」と悩まれた方がいるかもしれません。
そんなときは、知的財産のプロである弁理士に頼るのが一番です!
弁理士は商標権のほか、特許権や意匠権についても熟知している知財の専門家。深い専門知識をもって、「そもそも出願するべきか?」とか「将来のことを考えるならどうするべきか?」など、あなたのビジネスに寄り添った提案をしてくれる存在です。
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まとめ
今回はバス会社にまつわる知的財産を、商標権を中心に紹介してきました。
知的財産はとっつきにくい部分も多いですが、上手に活用すれば自社サービスをより盛り上げてくれる、心強い味方となります。
なかでも”ブランド”とか”ブランドイメージ”を守ってくれる商標権は、バス会社も注意を払っておくべき存在。もし商標について困ったことがあれば、特許事務所や弁理士に相談してくださいね。
そして、今回の記事で知財の世界について興味が湧いた!という方は、ぜひ知財HRもご覧ください!
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