古代史オタクが行く奈良・和歌山2泊3日の旅~番外編と熊野予習編~

古代史オタクが行く奈良・和歌山2泊3日の旅~番外編と熊野予習編~

4月に奈良へ行ったばかりなのに、5月もまた再びの奈良へ。今回は奈良の十津川を抜けて、熊野へと旅する1泊2日のバスツアーです。

そしてバスツアー前日(金曜日)に行われたのが関裕二先生の講演会。場所は御所駅から車で約12分のところにある「葛木御歳(かつらぎみとし)神社」の薬膳カフェ「まつり香」です。

午前中は近鉄大和八木周辺を観光し、お昼からは神社最寄り駅の御所観光を楽しんだ後、葛木御歳神社へ向かいました。

■ツアー番外編&関裕二先生講演会in葛木御歳神社

JR御所駅==お菓子処・あけぼの==洋食屋ケムリ食堂==葛城一言主神社==九品寺==近鉄御所駅集合・出発==葛木御歳神社・関先生講演会==大和八木駅到着・終了==懇親会==帰宅

■関裕二先生・東川(うのかわ)宮司さんと行く熊野三社参りツアー

<1日目午前:奈良・十津川・玉置神社参拝編>

近鉄橿原神宮駅集合==葛木御歳神社==十津川村「谷瀬の吊り橋」休憩&昼食==玉置神社==猫又の滝==十津川温泉「湖泉閣 吉乃屋」宿泊

十津川村・玉置神社編≫

<2日目:熊野三社巡り編>

宿出発==神倉神社==熊野速玉大社==「しもじ本宮店」で昼食==熊野本宮大社==道の駅 吉野路大塔==近鉄橿原神宮駅着・解散

熊野三社巡り編はこちら≫

ツアー番外編:蘇我氏ゆかりの地を巡る

大和八木駅==宗我坐宗我都比古(そがにますそがつひこ)神社==入鹿神社==今井町==JR畝傍駅

蘇我氏ゆかりの地を巡るはこちら≫

現地の地理に疎いとムダが多い・・・JR御所(ごせ)駅は意外と不便だった

JR畝傍駅

スマホが出来て便利なのはアプリで路線図を調べられるアプリが使えるから。ということで、今井町から葛木御歳神社の最寄りである御所駅までどうやって向かうのかチェックしてみました。

今井町の最寄り駅は近鉄八木西口駅(徒歩約5分)かJR畝傍駅(徒歩約8分)。御所は近鉄御所駅とJR御所駅があります。

JR御所駅
JR御所駅

乗換えが少ないJR線を選んだのですが・・・。これがちょっと大失敗。

桜井線で高田駅に向かい、そこから和歌山線(五条行き)に乗換えて御所駅に行くのですが、電車の本数が1時間に1本ぐらいしかない。が~ん。まあ、近鉄だって似たようなものなんですがね。

JR御所駅にあった地図
JR御所駅にあった地図(どれも近そうに見えるけどめっちゃ遠い)

高田駅で30分以上待ってようやく無事JR御所駅に到着。「御菓子司 あけぼ乃」でレンタサイクル(電動アシスト付き)を予約してあるので、歩いてお店まで向かいます。

久しぶりの自転車に戸惑う還暦、地図見ながらって無理じゃね?

とりあえず、ランチを食べようと向かったのが「洋食屋ケムリ」。ランチのナポリタンがとてもおいしそうなので、こちらを目指します。

車もバイクも免許を持っていますが、日頃全然乗らないし。まして自転車も、数年前に明日香村を爆走して以来。どこかヨロヨロと危なっかしい運転です。

しかも、地図アプリ見ながらなんて無理じゃね?還暦を迎えてすっかりおばちゃんになっていることを自覚しました。

洋食屋ケムリ
洋食屋ケムリ

道を間違えつつ、ようやくたどり着いた「洋食屋ケムリ」。2008年に廃業した大正5年創業の銭湯「御所宝湯」を再生しようと始まったプロジェクト「GOSE SENTO HOTEL」の“食”を担うスポットとして、元煙草屋さんをリノベした食堂です。

「風の森」でおなじみの油長酒造

「GOSE SENTO HOTEL」は、「泊・食・湯」分離型のホテル。奈良県下で古民家再生を手がける株式会社narrativeと、「風の森」で知られる酒造・油長酒造株式会社、「皆様石鹸」でおなじみの株式会社フェニックスが参画しています。

御所宝湯
約14年ぶりに復活した「御所宝湯」

江戸時代から変わらぬ街並みを残す「御所まち」の中には、万年筆屋を営んでいた古民家を使った宿「RITA御所まち」、元自転車屋さんの面影を残す「宿 チャリンコ」があり、お食事処として「洋食屋ケムリ」、入浴場所として「御所宝湯」が街中に点在している、というわけです。

ローカル・ガストロノミーを提供する「洋食屋ケムリ」

元煙草屋さんの面影を残す洋食屋ケムリ

元煙草屋さんだった、ということと、火でお料理する、ということで店名に「ケムリ」と付けている「洋食屋ケムリ」。地元マダムの間では有名らしく、予約して訪れる人が多かった印象です。

カウンター席とテーブル席、2階席も

訪れたのが平日で遅めのランチタイムだったので、なんとか入店できました。食事だけの利用もOKで、ランチ・ディナーともにコースのみ。

ランチコースのお品書き

メインはナポリタンの他、肉料理・魚料理、ハンバーグから選択可能です(メイン料理によって料金が異なる)。メニュー内容は2カ月に1度、変更されます。

葛・鴨に代表される御所ならではの食材を使った旬を感じる内容。「GOSE SENTO HOTEL」に宿泊しているお客様はモーニング・ランチ・ディナーをここで食べられるようです。

前菜「炙り鰹 梅肉と片上醬油 茗荷」

前菜「炙り鰹 梅肉と片上醬油 茗荷」

前菜として提供されたのが「炙り鰹 梅肉と片上醬油 茗荷」。お野菜は奈良、御所近郊のものを使用しているそうです。御所市にある片上(かたかみ)醬油は選りすぐりの原料を贅沢に使い、濃厚かつ洗練された醤油を醸造しています。

木桶発酵の天然醸造で、奈良県産大豆を主原料にし、自然のままに発酵醸造。食品添加物は使わない無添加無調整の醤油は、なんともよい香りでお野菜の風味を引き立たせていました。

スープ「地野菜のポタージュ」

地野菜のポタージュ

見た目も美しい地野菜のポタージュ。この日は玉ネギでした。大量の玉ネギをひたすら煮詰めてつくるそうです。

カプチーノ状に泡立てたスープがポタージュの上にオン!玉ネギの美味しさを余すところなく味わえました。

ベストな温かさ、焼き加減で提供されるバケット

バゲットはおかわり自由

途中で提供されたバゲットのおいしいこと!温め加減(焼き加減)も最高で、ついお代わりしてしまいました。

メイン「洋食屋ケムリのナポリタン 美人卵」

洋食屋ケムリのナポリタン 美人卵

トマトソースたっぷりのナポリタン。御所市にある西川養鶏さんの〝美人卵〟を半熟にして乗せてあります。

こちらの“美人卵”は御所市のごせブランドにも認定。甘味の強い黄味と少し塩味を感じる卵なのだそうで、卵特有の生臭さがなく、ふるさと納税でも人気だそうです。

半熟卵をからめて食べてもおいしい

トマトのうま味をたっぷりとまとったナポリタンは極上の味わいでした。

デザート「柑橘のブリュレ ショコラと山椒のアクセント」

柑橘のブリュレ ショコラと山椒のアクセント

最後のデザートはまるでアートのような一皿。チョコレートと柑橘系の組み合わせは最高ですよね。

山椒を効かせることでどこか和の雰囲気も。御所にお越しの際は、ぜひ忘れずに立ち寄ってみてはいかがでしょうか。あらかじめ予約するのをおススメします!

お店は「白龍大明神(葛城川の土手)」のお向かいにあります。

白龍大明神
白龍大明神

Information

洋食屋ケムリ
営業時間:ランチ 11時30分~15時(L.O.14時)/ディナー 18時~22時(L.O.20時)
住所:奈良県御所市西柏町1296
問合せ先:050-3196-4077

電チャリにまたがり、御所を爆走!?「葛城一言主神社」へ

葛城一言主神社
葛城一言主神社

再び電動アシスト付き自転車にまたがり、ヨロヨロと出発。関裕二先生から「九品寺」がおススメといわれていたので、そちらに向かっているつもりが、「葛城一言主神社」の看板が!

よってらっしゃいというお導きが

これは寄ってらっしゃい、という神のお導きということで立ち寄ることにします。地元では“いちごんさん”の愛称で親しまれています。

いちごんさんと呼ばれている

主祭神は葛城之一言主大神、幼武尊(第21代雄略天皇)です。「葛城一言主神社」は願い事を一言だけ聞いてくれる神様。

「古事記」では雄略天皇が葛城山で狩りをしている最中に、まったく同じ姿で現れた一言主大神。そのことを天皇が咎めると、「私は善事(よごと)も悪事(まがごと)も一言で言い放つ神である」と答えたそうです。

雄略天皇像
雄略天皇像

天皇は大神に深く畏み、家臣たちの武具、着ている装束に至るまで全てを献上したとのこと。また「日本書紀」においては仲良く轡を並べて狩りをした、と書かれているそうです。

ちなみに雄略天皇は讃・珍・済・興・武という五世紀の「倭の五王」の1人(武に当たる)といわれ、“ワカタケルノミコト”のことではないかといわれています。

乳銀杏
乳銀杏

拝殿の前にはとても大きな銀杏の木がありました。樹齢推定1200年ともいわれ、この木に祈願すると子どもが授かり、お乳の出が良くなると伝えられているそうです。

無患子
無患子

境内にはこの他にも御神木といわれる大木がたくさん。無患子は子どもが患うことがないように、という意味が込められた名前です。無患子の実はサポニンが豊富で石鹸としても利用されてきました。

この他、榧(カヤ)や欅、楷樹(カイノキ)なども。写真は撮り忘れましたw

もう1つ、見逃してしまったのが「蜘蛛塚」。神武天皇が東征の際に土蜘蛛を退治し、頭と銅と脚を切って埋め、その上に大きな石を置いたという伝承が。

葛城一言主神社の蜘蛛塚
葛城一言主神社の蜘蛛塚

その蜘蛛塚が一言主神社の境内にあるものだ、というわけです。

「土蜘蛛」とはその土地の民のことを意味し、ヤマト王権に従わなかったものたち、という意味があります。神功皇后が山門の県の女首長である「土蜘蛛(田油津姫)」を退治した、というお話もありましたね。

神武天皇が土蜘蛛と戦った時、葛(かつら)のつるで作った網で蜘蛛を覆い殺したので、この土地の名前を「葛城(かつらぎ)」と名付けたといわれています。

蜘蛛窟
蜘蛛窟

金剛山東麓に鎮座する「高天彦神社」の近くには蜘蛛窟があるそうで、その由来には「長脛族(ながすねぞく)の住家」うんぬんとかかれているとか。神武天皇と戦ったのは長脛彦。

脛の長い人たちが葛城の地と縁が深~いというのを実感するエピソードですね。

Information

葛城一言主神社
住所:奈良県御所市森脇432
問合せ先:0745-66-0178

「九品寺(くほんじ)」まで電チャリを飛ばす!

九品寺

続いて浄土宗のお寺「九品寺」へ向かいます。山号は戒那山(かいなさん)、本尊は阿弥陀如来で行基さんが開いたお寺なのだそうです。

行基さんの像もありました。
行基さんの像もありました

九品寺はサンスクリット語で「上品・中品・下品」と人間の品格をあらわすそうです。

そういえば世田谷区にある九品仏駅近くの「浄真寺」にも「上品堂」「中品堂」「下品堂」と3つのお堂がありました。それぞれに阿弥陀仏が3体ずつ安置されており、こちらのお寺でも當麻寺の練供養のように“お面かぶり”の行事を行っています。

都心にあるのに自然が豊かで、行くととても落ち着くお寺です。近所に住んでいた頃はよく散歩がてら通い詰めていました。

九品寺の境内

葛城にある九品寺のご本尊は阿弥陀如来像(木造)で国の重要文化財。普段は非公開なのだそうです。

でもってこの九品寺、千体石仏がとても有名なのだそうですが、しっかり見逃していました・・・。

この地を支配していた豪族である楢原氏が南北朝の戦いのとき、南朝に味方していた楠木正成公のため一族を引き連れて参戦。その戦いに行くとき、一族は身代わりのため石仏を彫って菩提寺だった九品寺に奉納したのが、いまに伝わる千体石仏なのだそう。

九品寺・千体石仏
九品寺・千体石仏

境内を発掘した際に出てきたそうで、掘ればまだまだ出てくるかもとのこと。うーん。予習が甘すぎると反省。お寺の門前にある池泉回遊式庭園「十徳園」を一回りして御所まで戻ります。

この後、御所駅で待ち合わせ時間までまだまだ余裕がありました。しかし、お尻の筋肉があまりにも痛くて自転車に乗っているのが苦痛という状況のため、早めにレンタルを終了してしまいました。

御所の街をぶらぶら徘徊し、待ち合わせ時間まで駅でまったりします。

Information

九品寺
住所:奈良県御所市楢原1188
問合せ先:0745-44-3169(御所市企画政策部地域活性推進室)
アクセス:近鉄御所駅から車で約9分

歴史作家をアッシーにして!?「葛木御歳神社」へ

葛城御歳神社
葛木御歳神社

「御所駅」に15時30分ね、といいつつダレも来ない・・・。私が待っていたのはJRの御所駅でしたが、皆は近鉄御所駅に集合していたというオチがつきました。申し訳ない。

歴史作家(関裕二先生)を待たせた上、JR御所駅まで迎えに来ていただき、無事葛木御歳神社へ。こちらの薬膳カフェ「まつり香」で関裕二先生の講演会(熊野ツアーの予習)があります。

「まつり香」で関裕二先生の講演会(熊野ツアーの予習)

始めましての方もいらっしゃれば、おなじみの方も。熊野という場所はいったいどんなところなのか、地理的なものから歴史、文化的なものまでさまざまな角度から紹介してくださいました。

バスツアーで訪れる熊野三山の主祭神やなぜ高貴な人々がこぞって熊野に詣でたのか・・・。鍵を握るヤタガラスとアジスキタカヒコネ、葛城とカモとヤタガラスの共通点、神功皇后と仲哀天皇と住吉大神との関係などなど。

最後に古代史のヒミツは尾張氏が握ってたね、という先生のお話に旅のワクワク感は否が応でもマシマシになってしまった講演会でした。詳しくは関裕二先生の「消された王権 尾張氏の正体(PHP新書)」ををぜひ!

Information

葛木御歳神社まつり香
住所:奈良県御所市東持田269
電話:0745-66-1708

関 裕二(せき ゆうじ)さんプロフィール

1959(昭和34)年、千葉県柏市生ま れ。歴史作家・武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。
仏教美術に魅せられ奈良に通いつめ、独学で日本古代史を研究。
『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』『神武天皇vs.卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など著書多数。

NHKカルチャー青山教室目黒学園カルチャースクールで古代史講座が絶賛開講中。また、月1回、一般社団法人伝統文化交流協会主催の「古代日本史の正体」というテーマでの講座がスタートしています。興味のある方はぜひ!

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この記事を書いた人
ちくわ

旅行メディア編集長兼ライター、総合旅行業務取扱管理者、旅行会社勤務経験あり、目黒区ボランティアガイド見習い中。プライベートでも古代史オタクとして年に数回フィールドワークに出かける旅好き。時々バス愛がさく裂!?

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