目黒駅から中目黒・恵比寿などを結ぶ「さんまバス」、BDYのEV小型バス(J6 2.0)が3台運行中
公共交通の空白地域を結ぶコミュニティバス。地方はもちろん、都内でも大活躍しています。
国土交通省の運行指針によれば、コミュニティバスとは「自治体が主体となって運行するバス全般を指す」もので、公共交通の空白地域を結ぶ、道路混雑の緩和、高齢者等の移動支援など、さまざまな目的で導入されているもの(参照元:国土交通省「コミュニティバスの導入に関するガイドライン」より)
都内でも台東区「めぐりん」や港区「ちぃバス」、渋谷区「ハチ公バス」、世田谷区「タマリバーバス」など、目にすることがよくあるのではないでしょうか。
今回は2024年3月から実証運行を開始した、目黒区の東部地区地域交通バス、通称「さんまバス」についてご紹介しましょう。
落語「目黒のさんま」の舞台となるエリアを運行する「さんまバス」
目黒三田通りを中心に走る「さんまバス」。目黒と聞いて真っ先に思い浮かべるのが落語「目黒のさんま」ですよね。
江戸時代に鷹狩りへやって来た将軍が、立ち寄った茶屋でさんまを食べます。脂ののった旬のさんまを焼いて出しただけですが、とてもおいしくて城に戻った後もその味が忘れられません。
家来にさんまを出すようにいいますが、脂を抜き・骨抜きにして蒸し、食べやすいように出されたのでちっともおいしくなかった将軍。「やはり、さんまは目黒に限る」といった、というお話です。
この落語の舞台となった茶屋があったのは、現在の目黒区三田二丁目にある「茶屋坂」にあった「爺々(じじ)が茶屋」だったそうです(参照元:目黒区ホームページより)。
「さんまバス」は、この茶屋坂や「めぐろのさんま祭り」が毎年開催されている目黒区民センターなどを通ることなどから「さんまバス」と名付けました。
バスの車体の色は、区の紋章と同じ江戸紫色がベースでさんまの絵柄が描かれた目黒区らしいデザインとなっています。
「さんまバス」はBYDの小型EVバス(J6 2.0)を採用
「BYD J6 2.0」はビーワイディージャパンが日本市場向けに開発。バッテリーから車両まで自社内で一貫生産しています。
長さ約7m・最大乗車定員36名、低床構造。1充電の航続距離は210㎞と、コミュニティバスとして使いやすいモデルです。
災害時には電源供給ステーションにもなる他、被災地に移動して冷暖房完備の避難所としても活躍可能なモデルとして、各自治体で導入を検討するところが増えてきました。
「さんまバス」車内にはスマホを充電するポートもありますよ。
区内を走っている「さんまバス」は全部で3台。そのうち、1台は厚生中央病院のラッピングバスとなってます。
CO2排出ゼロでディーゼル車よりも部品点数が少ないため、メンテナンス費用を抑えられるなど、ランニングコストの削減も期待できるなど、エコな乗り物としても魅力的ですね。
目黒区のコミュニティバス「さんまバス」が走るルートは?具体的に
「さんまバス」は現在、8時30分~16時45分まで1日12便、45分間隔で運行中。運行事業者は東急バスです。
実証運行は最大で3年間とし、利用状況に応じて本格運行に移行するか、廃止をするかなどを検討することになっています。コミュニティバスは地元の方の便利な足になるとともに、観光地巡りにもぴったりな側面も。
一部バス停で乗換えができるので、一日に何度もバスを利用する人は東急バス一日乗車券を利用すればお得です。
実際にどんなルートを走るのかを具体的にダイジェストでご紹介しましょう。
名建築家・村野藤吾さんが手がけた「目黒区総合庁舎」
目黒区民にとっておなじみの「目黒区総合庁舎」。区役所の他、保健所、目黒都税事務所などもあります。
こちらの建物は1966年(昭和41年)に建築家・村野藤吾さんが設計した「旧・千代田生命本社ビル」を2002年(平成14年)に改修し、総合庁舎として利用されているもの。村野さんは「世界平和記念聖堂」「箱根プリンスホテル(現ザ・プリンス箱根芦ノ湖)「日生劇場(日本生命日比谷ビル)」などを手がけています。
建築好きの方ならぜひ一度は訪れて欲しいスポット。「階段の魔術師」ともいわれた村野さんのデザインしたらせん階段はウェディングフォトスポットとしても人気です。
都内屈指のお花見スポット「なかめ公園橋前」
続いてご紹介するのが「なかめ公園橋前」。こちらはドラマのロケ地などによく使われるなかめ公園橋があり、バス停は「中目黒公園」と目黒川を挟んだ向かい側にあります。
春になれば大勢のお花見客が訪れる目黒川。特に中目黒駅から池尻大橋方面へ向かった先が混雑します。
JR目黒駅に向かう方は少しゆっくりと歩けますのでねらい目ですよ。
目黒区内のイベントがよく開催されている「田道ふれあい館前」
目黒川を挟んで「田道広場公園」と「目黒区民センター」があり、その間を「ふれいあい橋」が結んでいます。バス停は「田道ふれあい館」の前。
田道広場公園や目黒区民センターでは毎年、「目黒区民まつり」や「目黒区商工まつり 目黒リバーサイドフェスティバル」、「目黒イーストエリア桜まつり」などが行われています。
田道広場公園周辺も目黒川のお花見スポットとしては比較的ゆとりがあるのでおススメですよ。
中目黒の賑わいを生み出す「FUNAIRIBA(フナイリバ)」
中目黒駅から徒歩約5分、のところにある「FUNAIRIBA(フナイリバ)」。目黒川沿いにあり、広場の下には目黒川中・下流部の治水をになう地下箱式調節池「船入場調節池」が設置されています。
「FUNAIRIBA(フナイリバ)」がある場所はかつて船発着場所があった場所で、現在は公園として整備。地域コミュニティ活性化を目的として、フリーマーケット開催やキッチンカーの出店などが行われています。
こちらもお花見スポットとしておすすめの場所です。また、山手通りを挟んでお向かいには日蓮宗のお寺「正覚寺」があります。
伊達家三代藩主・綱宗公の側室・三沢初子さんの像やお墓(都指定文化財)があることで有名。秋はこちらの紅葉が大変美しく、おススメのスポットとなっています。
「YEBISU BREWERY TOKYO」がある恵比寿ガーデンプレイス
「恵比寿ガーデンプレイス」はかつてヱビスビール工場があった場所。1994年10月に開業しました。
「さんまバス」のバス停は、恵比寿ガーデンプレイス内を通るプラタナス通り沿い、恵比寿ガーデンテラス弐番館の前あたりにあります。
「恵比寿ガーデンプレイス」には、2024年4月に「YEBISU BREWERY TOKYO」がオープン。35年ぶりにビールの醸造を再開し、大きな話題を呼びました。
中目黒エリアから三田エリアまでのアクセスはちょっと不便だったので、「さんまバス」を利用して出かけるのもいいですね。
この他、「東京共済病院」「厚生中央病院」と2つの大きな病院やJR目黒駅(目黒通り沿い・東口側)にも停車するので、地元の方にとって通院の足として利便性の高いルートとなっています。
「さんまバス」実証運行を支援するため、「ふるさと納税」を通じて寄付ができます
目黒区では「さんまバス」本格運行を目指し、積極的な利用と支援のための寄付を受付中。以下のポータルサイトから「ふるさと納税」することができます。
寄付金の使い道の中から「さんまバスを守り、育てたい!」を選択してください。
5,000円以上の寄付をした方には「さんまバス」のコースターやシールシート、ステッカー、ペーパークラフトといった記念品が用意されています(ふるさと納税の返礼品を希望される方は除く)。
※記念品がなくなり次第、贈呈を終了する場合があります。
バスファンにとっては見逃せないプレゼントですね。
コミュニティバスを利用して都内観光も楽しめる!
目黒区内は南北に長く、区内を東急東横線・東急田園都市線・東急目黒線が走っていますが、それぞれ横を繋ぐ路線としては東急大井町線がありますが、今回の東部地区のように路線バスがカバーしきれていないエリアも。
免許返納などで車での移動ができない高齢者の方や電車やバスの乗換えが面倒な場合、機動力を発揮するのがコミュニティバスです。自治体によってはオンデマンドバスや将来的な自動運転を見据えた導入を検討しているところも増えてきました。
台東区の「めぐりん」などは、人気観光地へのアクセスが便利なのでちょっとした都内観光にも活用されています。目黒区内にお住まいの方はもちろん、おすすめ観光地を結んでいる「さんまバス」、ぜひ活用してみてはいかがでしょうか。
■取材協力
バス会社の比較がポイント!