世界遺産の橋の建設に日本人が携わっていた! バスで行くフォース鉄道橋とボートツアー
こんにちは。エディンバラ在住のなこです。
きょうは、エディンバラ・バス・ツアーズで世界遺産のフォース鉄道橋まで行ってみます。
スコットランドの誇り、フォース鉄道橋はその美しさと技術力の高さから、橋好きの人たちにとって「一度は訪れたいスポット」なんだとか。
そんな橋の建設に、じつは日本人が関わっていたとのこと。
いろいろ探りがいのあるこの橋まで、さっそく出発です。
色鮮やかなダブルデッカーバスに乗り込みます
前回同様、旅のはじまりはエディンバラ中心街の橋の上から。
愛嬌のあるスタッフと話しをしながら、バスが来るのを待ちます。
そして、今回乗車するバスが来ました!
フォース鉄道橋のイラストがかわいい、カラフルなバスです。気分も盛り上がります。
フォース鉄道橋をめぐるツアーは途中下車なし。
ガイドさんはいませんが、旅のガイドブックなどには書かれていない、面白いエピソード満載の9ヶ国語対応のイヤホンガイドがツアーのお供をしてくれます。
世界遺産に登録されている新市街をめぐりながら走ること20分。
すでにカントリーサイド!ひつじがいっぱい!緑と隣り合わせな立地条件のエディンバラ。
シティーライフを楽しみながら、大自然も満喫できるところが魅力です。
さて、遠くにフォース鉄道橋が見えてきました。すごく大きな橋!
「鋼鉄の恐竜」と呼ばれる、フォース鉄道橋。大きな足で踏ん張ってそびえ立つ姿を見ようと、バスに乗り合わせた乗客のみなさん、身体を乗り出して眺めています。
2015年にユネスコの世界遺産に登録されたこの橋は、技術的にも美しさでも優れ、建設から100年以上たった今も、橋好きな人たちを魅了しているそうです。
わざわざ橋を見るために、エディンバラまで来る方もいるとか。すごい人気があるんですね。
そして遠くに見える吊り橋は、車用の橋と新しく建設中の3本目の橋。
そうなんです、フォース鉄道はその名のごとく、鉄道のみが走る橋。車が走ることはないのです。
現在、フォース鉄道橋を行き交う電車は、1日200本ほど。歴史の長い橋ですが、現役選手なんですよ。
あ、橋の上を電車が走っているのが、見えます!橋のサイズがビッグなだけに、電車が小さく見えますよね。
世界遺産の建設に日本人⁈
このフォース鉄道橋、長さ約2500メートル、高さ100メートルという、本当に大きな橋ですが、スコットランドの強風にも耐え抜ける橋を造るべく、カンチレバーという構造が採用されています。
そしてこの建設には、なんと日本人が関わっているのです。
上の写真中央にいるのがその日本人、渡邊嘉一。
彼は、現在の東京大学工学部を卒業すると、1884年にグラスゴー大学に留学。
卒業あともスコットランドにとどまり、当時建設中であったこのフォース鉄道橋の建設工事監督を任されました。
この写真は橋の建設に採用されたカンチレバー構造を説明するために、人間で実演して見せたときのもの。2007年発行のスコットランド紙幣にも印刷され、現在でも使われています。
渡邊嘉一は帰国後、日本土木会社の技術部長となり、そのあと、参宮鉄道、関西瓦斯、東京石川島造船所、京阪電気鉄道会社などの社長を務め、「日本土木史の父」と呼ばれているそうです。
強風に負けない橋を作れ!
このスコットランドのシンボル的な存在であるフォース鉄道橋は、イギリス国内で鉄道が張り巡らされた19世紀末の1890年から利用が始まりました。その建設行程は、スコットランドの強風との闘い。そして長〜い作業だったようです。なかなか終わらない仕事を表す「Painting the Fourth Bridge」という英語表現に、橋の名前が使われるほどですからね。
じつはフォース鉄道橋の前にダンディーンのティ・ブリッジという橋が建設されました。でも強風で壊れ、走行中の列車とともに崩壊。多数の犠牲者を出したという惨事があったのです。その教訓からも、風に強い橋にすることが最重要課題とされたんですね。
ちなみに、カンチレバー構造とは、片持ち梁の原理を応用した橋。でも「方持ち梁って何?」ですよね。これは梁の一端は固定され、もう一端が動くことのできる構造のこと。水泳プールの飛び込み版などが、その例だとか。そしてこの構造を用いた橋は古くからあったようで、日本では「猿橋」がカンチレバー構造の橋ということです。
フォース鉄道橋の場合、まず川の途中に3つの鋼塔を築き、そこからカンチレバー構造を用いて腕を張り出し、間にトラス構造の橋桁を置いて造られています。
そんなさまざまな研究と努力が盛り込まれた橋に使用された鋼材は50,000トンを越え、リベットの総数は650万個。そして建設に関わった作業員は約4600人で、57人が事故犠牲者になったそうです。スコットランド人の思い入れが強いのも、納得です。
フォース鉄道橋ができる前は、北側のアバディーンなどに行くとき、人々はフォース湾を西に大きく迂回して行っていました。なので短時間でフォース湾を渡ることのできるこの橋は、多くの人に待ち望まれていたものだったに違いありません。実際、翌年セント・アンドリュースで開かれた全英オープンでは、この橋のおかげで集客力が上がり、経済効果もあったそうですよ。
ボートはインチコルム島へ
Hawes Pierでバスを下車し、ボートに乗り込みます。折しも、私たちがツアーに参加した日は、ひどい強風…。フォース鉄道橋の建設が難航したのも納得です。日本だったらボートは欠航…という天候ですが、キャンセルにはならないようなので、ボート乗り場まで風に逆らいながら歩きます。
ボートが出発するとフォース鉄道橋へと向かい、橋の真下を進みます。橋にはあまり興味のなかった私も、その美しさに大興奮。トラスと呼ばれる細かい三角の編み目が、素敵です。
しばらく荒波の中、揺られながら海を眺めていると、インチコルム島が見えてきました。この島で1時間半、自由に散策です。
インチコルム島はフォース湾に浮かぶ小さな島。全体の長さは、800メートルしかありません。エディンバラから北に約9.5キロ、フォース橋から東に約6.5キロのところにあります。
現在はヒストリック・スコットランドが所有する無人島ですが、過去2回の大戦時には、エディンバラを守るための軍事拠点として重要な役割を担っていた島なのです。
第1次世界大戦時は海からの、そして第2次世界大戦には空からの攻撃に備えるために、この小さな島にたくさんの兵士と軍備が整えられていた…。現在の静かで美しい風景からは、想像もできませんが、第2次世界大戦の間は500人ほどの兵士が暮らし、彼らの宿舎はもちろん、パン屋、肉屋、建具屋など、生活に必要なものを購入する店までもが用意されていたそうです。また島では1916〜1917年ごろに掘られた、弾薬格納用のトンネルやNAAFI(The Navy, Army and Air Force Institute)の跡を見ることもできます。
戦争の面影を色濃く残すインチコルム島ですが、1番の見どころは、12世紀に建てられた修道院。スコットランドで最も保存状態の良い、中世の趣を残した修道院のひとつです。14世紀にはイングランド軍から何度も攻撃を受けたそうですが、現存する石屋根のチャプターハウスは13世紀、また回廊は14世紀と、建てられた当時そのままの姿が残っています。
島の西側は開放感バッチリの丘。フォース湾に浮かぶ島々の中で、一番美しいとされているこの島の魅力がたっぷり味わえます。
お迎えのボートがやってきました。
インチコルム島周辺では海鳥や周辺に生息する動物を見ることもできます。ボートツアーのパンフレットには「アザラシを見れなかった場合、次回の乗車は無料」とまで書いてあります!本当に見ることができるのか、アザラシくん⁉
あ、見えてきました。グレイシール(アザラシ)です。なんだかたくさんいます。集団で群れを成して生活しているように見えますね。4月から7月ごろにはパフィン(ニシツノメドリ)を見ることもできるそうですよ。
帰路もフォース鉄道橋下を通って行きます。それにしても、すごい波。水しぶきで窓ガラスは水滴だらけです…。
ふたたびバスに乗り込み、市内へと戻ります。途中、田園風景の中を通過して出発地点の橋に戻ってきましたります。
世界遺産と歴史を堪能できる、見どころタップリのフォース鉄道橋とボートツアー。家族みんなで行きましたが、全員、満足、満足、大満足〜!エディンバラを訪れた際には、ぜひトライしみて下さいね。
フォース鉄道橋とボートツアー
Fourth Bridges Bus & Boat Tour
大人£20 小人£10
http://edinburghtour.com/tours/bus-and-boat-tour
バス会社の比較がポイント!