
貸切バスの料金はバス会社ごと、出発地によって違う!?高いエリア・安いエリアはどこ?
貸切バスを旅行先でチャーターした場合と、地元でチャーターした場合。実は出発地ごとに異なる上、バス会社ごとにバス料金の単価も違うってご存じでしたか?
実は、国土交通省の地方運輸局ごとに最低料金の基準を示した貸切バスの「公示運賃額」を2023年8月25日に発表。この金額を下回らないように、各バス会社が運輸局へ貸切バス料金を計算する基となる単価を独自に届け出ています。
またこちらの公示運賃は経済状況・事業者経営状況を勘案し、2年ごとに見直しが図られることに。そこで2025年9月26日(金)に「新公示運賃」が示され、遅くとも11月1日(土)までには適用されることになりました。
同じ距離・時間を利用したとしても金額が変わってくるのはもちろん、バス会社ごとに設定している料金単価が違うので、見積りを取らない限り正確な金額はわからなくなりました。
今回は貸切バスを初めて借りた場合、ちょっとわかりにくい料金計算とその仕組みについて解説していきましょう!
国土交通省が2014年に「貸切バス運賃・料金」を導入した理由

「貸切バスの料金ってバス会社が自由に決めていいんじゃないの?」
平成26年(2014年)4月1日に公示された国土交通省による「貸切バスの新運賃・料金制度」。貸切バス利用者の安全に関わる費用(安全コスト)を適切に反映したものとして導入されたものでした。
貸切バス運賃・料金の「下限から上限」の基準を決めたもので、その範囲内でバス料金を設定して申請すれば問題なし(特に認可は必要ない)というもの。
その下限~上限の範囲外の料金設定をする場合は、原価コストや利益収支など、料金設定が妥当であるということを示し、認可を受ける必要がありました。
こちらの制度導入後、旅行会社が貸切バスを手配した際に、バス会社に対して不適切な「手数料」を請求する事例が多くあったことから、国土交通省に通報窓口を設置。
また、旅行会社の手数料に関する通報窓口として第三者委員会「貸切バスツアー適正取引推進委員会」を設け、バス運賃・料金の「下限割れ」を防ぐ対策がとられています。
2023年に国土交通省が「新公示運賃額(最低基準額)」を発表、貸切バス料金の値上げに踏み切った理由
皆さんも実感されている通り、円安や原油高などの影響を受け、さまざまなものが値上がりしています。貸切バスもガソリンで運行するものなので当然、コストがかさんでいることは想像できることでしょう。
国土交通省が公示した貸切バス運賃・料金の「下限額」は実際のところ、原価を下回った金額。閑散期に安い料金で運行できるように設けられていたものでした。
2014年にスタートして以来、繁忙期でも原価割れをの料金での契約が約7割、通常期でも約9割が基準額を下回った契約でバスを走らせていたことがアンケート調査で判明。
このままでは安全運行はもちろん、バス会社の経営そのものが危うくなってしまいます。
そこで、原価割れを起こさない基準額を下限とし、上限は設けずに各バス会社が自分たちの経営状況に合わせて単価を決めて運輸局に届け出る、という方針に変更。
そして今回の値上げ(7~8%ほど)は貸切バスドライバー不足を解消するため、平均給与額を全産業平均給与額と同程度までに引き上げる措置として行われた、というわけです。
バス会社ごとに単価も異なるため「見積りを取らない限り正確な料金はわからない」ので、必ず相見積りを取り寄せて、しっかり比較してから予約をするようにしましょう。
ちなみに貸切バスの繁忙期・閑散期はこちらの記事も参考に。
ところで貸切バスの運賃と料金の違いって何?

ところで気になるのが貸切バス 「 運賃」と「料金」の違い。「運賃」とは私たちがバスや鉄道などの乗り物に乗り、目的地まで運んでもらった場合(輸送・運送)の費用をいいます。
貸切バスの運賃は、バスを走らせた場合の距離「1㎞あたりの単価」とかかった時間「1時間あたりの単価」を加えたもの。時間・キロ併用制運賃方式と呼ばれています。
一方「料金」とは、基本的な貸切バスの運行に追加された物やサービスについて支払うもので、以下3つの条件が追加された場合に加算されます。
- 2名体制(交替ドライバーが乗務)での貸切バス運行
- 深夜・早朝運行(22時から朝5時まで)に対する割増料
- 特別な装備を持つバスに対する割増料(電動リフト付きバスなど)
貸切バスの料金はこの「運賃」と「料金」の2階建てで算出されてきたというわけです。
また、もう一つ、貸切バス料金には安全運行のために必要な点検・点呼を出庫前・帰庫後(バスが営業所を出る前、戻ってきた後)それぞれ1時間ずつ行うことと定めています。

このため、貸切バスに実質的に乗車した時間+安全点検を行う2時間分を加えた利用時間として計算するもとされてきました。
しかし、2023年6月27日に発表された国土交通省の「貸切バス運賃・料金制度ワーキンググループ」フォローアップ会合によれば、こちらの「料金」についても見直しが行われています。
また、2025年3月からは小型マイクロバスよりもコンパクトなコミュータ車(ミニバス)という区分が追加。少し安い金額で運行できるようになっています。
ただし、コミューター車(ミニバス)を所有しているバス会社は全国的にも少ないので注意が必要です。
【参考記事】
・貸切バスは短時間利用なら安い?貸切バス料金を徹底解説!
・貸切バスでいちばん「小さな(小型)バス」ってどんなバス?お得な借り方のコツ
・ミニバス(ジャンボタクシー)について
同じ利用条件なのに、出発地(エリア)によって貸切バスの料金が違う理由は?

全国、料金が統一されていれば、バス料金の計算も簡単で、めんどくさくないのにと思うかもしれません。しかしながら、エリアによって貸切バスに対するニーズが異なります。
例えば、人気の観光地である北海道・沖縄は、飛行機で移動し、現地での移動手段として貸切バスは大人気。観光旅行での利用者が多いエリアといえます。
その一方で、観光旅行よりも地元の学校や冠婚葬祭の送迎が多いという地方も。また、人件費も地方によって微妙に異なるため、一律同じ料金とはなかなかいかないようです。
国土交通省では、これら貸切バスのニーズや地方の事情を加味した上で、各地方運輸局ごとに料金を算出しています。このため、貸切バス料金は「地方運輸局ごとに異なる」というわけですね。
国土交通省の地方運輸局とは何?貸切バス料金はどのぐらい違うの?
「地方運輸局」とは国土交通省の地方支分部局(国の行政機関、地方出先機関のこと)の一つ。その地方の運輸・交通に関する業務を管轄しています。
地方運輸局は全国を北海道・東北・関東・北陸信越・中部・近畿・中国・四国・九州の9運輸局が管轄し、沖縄のみ内閣府沖縄総合事務局運輸部が管轄しています。
貸切バスの「新公示運賃額(最低基準額)」は、各運輸局ごとに計算されているので、同じ管轄内の都道府県は同じということです。
同じ条件で料金計算した場合、最も高い・安いのはどのエリア?どのぐらい値上がりしたの?

北海道から沖縄までの全エリア、以下の条件でバスを借りた場合を計算してみました。
- 大型バス利用
- 利用時間は9時間(安全対策のための点検運行前後2時間含めた11時間での料金)
- 移動距離は100㎞
2023年9月から適用されてきた公示運賃額
地方運輸局 | バス料金 |
---|---|
北海道 | 82,797円(税込)~ |
東北 | 97,713円(税込)~ |
関東 | 97,218円(税込)~ |
北陸信越 | 94,424円(税込)~ |
中部 | 97,922円(税込)~ |
近畿 | 107,019円(税込)~ |
中国 | 97,372円(税込)~ |
四国 | 92,598円(税込)~ |
九州 | 91,993円(税抜)~ |
沖縄 | 85,283円(税抜)~ |
2025年11月から適用される新公示運賃額
地方運輸局 | バス料金 | 値上がり率 |
北海道 | 90,068円~ | 8.1% |
東北 | 106,073円~ | 7.9% |
関東 | 105,699円~ | 8.0% |
北陸信越 | 102,663円~ | 8.0% |
中部 | 106,403円~ | 8.0% |
近畿 | 115,984円~ | 7.7% |
中国 | 105,369円~ | 7.6% |
四国 | 100,474円~ | 7.8% |
九州 | 100,232円~ | 8.2% |
沖縄 | 92,191円~ | 7.5% |
この一覧をみると最も高いエリアは近畿(関西エリア)!そして最も安いエリアは北海道。そして最も値上がり率が高かったのが九州エリアという結果に(最低基準額で比べた場合)なりました。
ちなみに中型バス・小型マイクロバスで比較してみると、最も値上がりしたのは小型マイクロバス(9~10%ほど)。バスの大きさは小さくとも、ドライバーは必ず1人必要であることを考えると、仕方がないことですね…。
ちなみに「貸切バス料金」にはバス車両チャーター代、ドライバー代、バス車内で起きた事故をカバーする保険代は含まれていますが、それ以外の実費(駐車場代、有料道路代など)は含まれていません。
観光旅行で利用する場合は、施設入場料やお昼代、ホテル宿泊費など、もろもろの経費が掛かりますのでご注意ください。
▼貸切バスの種類・大きさ・定員数はこちらをチェック!
貸切バスの種類とサイズ比較|大型バス|中型バス|小型バス|マイクロバス
貸切バスの料金は出発地によって違うまとめ

貸切バス料金の計算方法は複雑な上にバス会社ごとにより異なります。いろいろな条件が重なるとなおさら!「貸切バスの達人」でもいろいろなパターンで料金相場をご紹介していますが、あくまでも目安。
バス会社の営業所からバスに乗車(降車)する場所までの距離によっても料金は違うので、利用が決まったら、ぜひバス会社に見積りをお願いしてみましょう。
「貸切バスの達人」なら複数のバス会社に同時に見積りをお願いできますので、とっても便利!貸切バス料金はしっかり比較して、お得にバスを利用しましょうね。
▼貸切バス料金についてのまとめ
- バス料金は国土交通省が発表した「新公示運賃額」が最低料金(下限額)。各バス会社ごとに単価が違うので、見積りを取らない限り正確な料金はわからない。
- 国土交通省の地方運輸局により、基準額がが異なるため、同じ条件で計算してもエリアごとに料金は異なる
- 料金には「利用時間」と「走らせた距離」、「安全対策のためのコスト」を含めた設定
- 深夜早朝(22時~5時)にかかる運行は割増料金になる
- 運転手が1人で運転してよい時間・距離は決まっており、それをオーバーする場合は交替運転手が必要で割増料金になる
- 電動リフト付きバスなど、特殊なバスは割増料金になる
▼47都道府県別の貸切バス料金相場はこちらも参考に
[北海道地方運輸局]北海道(札幌)
[東北地方運輸局]青森|岩手|仙台(宮城)|秋田|山形|福島
[関東地方運輸局]茨城|栃木|群馬|埼玉|千葉|東京|横浜(神奈川)| 山梨
[北陸信越地方運輸局]長野|新潟|富山|金沢(石川)
[中部地方運輸局]福井|静岡|岐阜|名古屋(愛知)|三重
[中国地方運輸局]鳥取|島根|岡山|広島|山口
[近畿地方運輸局]滋賀|京都|大阪|兵庫(神戸)|奈良|和歌山
[四国地方運輸局]徳島|香川|愛媛|高知
[九州地方運輸局]福岡|佐賀|熊本|大分|宮崎|長崎|鹿児島
[内閣府沖縄総合事務局運輸部]沖縄
バス会社の比較がポイント!