【三菱ふそう】大型・中型バスで採用されているシフトレバーの特性を知ろう!
こんにちは!編集部Iです。
ドライバ―のさらなる知識・技術向上で安全運行につなげる!
今回は横浜市にある貸切バス会社「シティアクセス」さんで行われた、ドライバー向けの安全研修会を取材してきました。
今回の安全研修会では、三菱ふそうトラック・バス株式会社の大下さんが講師をつとめ、その特性や操作方法などを詳しくレクチャー。
ドライバ―の知識や技術向上につなげるとともに、便利な機能や安全技術を上手に活用する方法を学ぶ内容になりました。
私も免許をもち、たまにではありますが、車のハンドルを握る身。今回の研修会はとても勉強になりました。皆さんにもぜひ知っていただきたいと思います!
三菱ふそう独自の「FCTM(フィンガーコントロールトランスミッション)」とは?
「シティアクセス」さんは、中型バス・小型バス・マイクロバスを貸切運行しているバス会社さんで、主に三菱ふそうのバスを導入しているそう。
普段は小型バスやマイクロバスを担当しているドライバーさんでも、中型バスを運転することがあるかもしれない、ということで、研修会ではあらためて「FCTM」の特性や操作方法を全員で共有。
知っているようでよくわかっていないその仕組みについて、きちんと理解しようというのが今回のメインテーマです。
それではまず、昔のシフトレバーと「FCTM」の違いを簡単に解説してみましょう!
かつてのバスのシフトレバーはこんな感じ。
長~いシフトレバーで、手を大きく動かしながらギアチェンジをしていました。小柄な女性だとかなりの重労働・・・。長時間運転していると疲れてしまいますね。
そこで1983年に三菱自動車工業が大型バスや中型バス向けに開発したのが「FCTM」というシフトレバーです。
見た目は普通の自動車についているシフトレバーと同じように見えます。まさに指先ひとつでシフト切り替えができるようになったため、運転の疲れを大幅に軽減。画期的な技術となりました。
では、この「FCTM」は具体的にはどんな仕組みなんでしょうか?
通常のマニュアルシフトレバーの場合、シフトレバーを通して、直接トランスミッションを操作してギアチェンジします。
それに対して「FCTM」は、シフトレバーの位置(セカンドかサードか・・・など)を電気信号に置き換え、圧縮空気でギアが操作されるという仕組みになっています。つまり、シフトレバーを操作しても「直接ギアチェンジしているわけではない」というのがポイントです。
無理なギアチェンジから、エンジンやトランスミッションを守る仕組み
「エンジンの回転数に合わせた適正なギアの選択」をしないと、オーバーラン(機械の許容限度を超えて稼働させてしまう)でエンジンやトランスミッションを壊してしまいます。
「FCTM」の場合、オーバーランを防ぐため、不適切な(エンジンの回転数に合わない)ギアチェンジが行われた場合、エンジン保護装置がついているため、シフトダウン(アップ)ができない制御になっています。
「FCTM」でギアチェンジを行うためクラッチを踏み込むと、コンピュータにその操作が電気信号で伝わります。コンピュータは「車速センサー」から現在でているスピードをチェック。エンジンの回転数と比べて、不適切と判断されると、そのギアチェンジが自動でキャンセルされます。
ギアが「ニュートラル状態」の場合、エンジンブレーキも、排気ブレーキ(ディーゼルエンジン特有の補助ブレーキ)も効きません。
最近ではオートマ免許が主流で、車そのものもマニュアルトランスミッション車を探す方が難しくなってしまいました。特にギア操作することなく、自動で適正なシフトチェンジが行われ、アクセス操作だけで車は問題なく走ります。
「FCTM」は大型バスや中型バスに30年以上前から採用されている仕組みですが、改めて講習を受けることで、いざという時に役に立ちます。
この「FCTM」は三菱ふそう特有のものですが、日野自動車では「FFシフト」、いすゞ自動車では「ACT」という名称で、シフトチェンジの負担を軽減した同様の仕組みを採用しています。
エンジンの回転数に合ったギアを選択するためには?
私が免許を取った●十年前は、オートマ車はありませんでした。教習所ではエンジンの回転数をしめす「タコメーター」をみて、シフトチェンジせよと教わりました。
エンジンの回転数に合わないギアを選択して、車がエンストしそうになり、ガクガクしたり、ガツンとスピードが落ちて前のめりになったり・・・ということをずいぶん経験しました。
また以前、スポーツカータイプのマニュアルトランスミッション車を運転していたとき、半クラッチを使いすぎて「壊れちゃいますよ!」とカーディーラーの人から叱られたこともありましたっけ・・・。
今回の研修会では大下さんから、シティアクセスさんが導入している三菱ふそう・エアロエースショートタイプMM(中型バス)」の「走行性能曲線図」を使い、詳しくレクチャーしていただきました。
実はよく車のカタログで見かけていたこの図。いったい何を語っていたのか全然知りませんでした!
プロドライバーさんであればいまさらですが、さっぱりわからなかったド素人ドライバーの編集部Iのためにお付き合いください。
まずはグラフの上、四角に囲まれた部分の下に向かって左から右へ1~6までの数字がかかれています。
そしてグラフの横軸は「車速(km/h)」、縦軸は向かって左側が「駆動力及び走行抵抗(N)」、右側が「エンジン回転速度(rpm)」を示しています。
ギアを表す数字に縦斜めの線が引かれていますが、この線は選択したギアで、理論上、どのぐらいの速度までを出せるかを表しています。
上の図で赤く囲った部分の中に、縦に青い線を引いてみました。6速のギアで出せる最高スピードは、約125㎞/hまで出せるということになります。
そして青い矢印で指し示した部分。「0~50%」と書かれ、左から右に向かって横に線が書かれています。この線は道路の勾配を表しています。
さらに黄色の矢印で指し示した部分。不規則なカーブを描いた線の上に「1~6」の数字が書かれていますが、これもギア数を表しています。
この線は、道路の傾きがあった場合、そのギアで出せるスピードを見ることができます。勾配が0%、つまり、フラットな道路なら6速で125㎞出せますが、3%の勾配がある坂道なら100㎞までという具合です。
ただし、5%の勾配がある道路となると、6速のギアの線が下回っているので、そのギアでは登れないということを意味しています。
この「走行性能曲線図」には重要な意味があったんですね・・・。
プロドライバーであっても、いまいち読み方がわからないという人も少なくないようです。スピード(エンジンの回転数)に合わせたギアを選択するというのはとても重要なこと。勉強になりました!
バスが持つ安全性能やサポート技術を過信しない!
「FCTM」の説明に引き続き、三菱ふそうのバスが備えている安全性能についての紹介がありました。
「三菱ふそうでは特に、事故が発生する前、なるべく早い段階で抑制効果を発揮する予防安全装置を活用したアクティブセイフティーに力をいれています」と大下さん。
研修会では、ドライバ―の運転の癖やコンディションをモニター・学習し、注意力が低下した場合に警報を鳴らす「MDAS-Ⅲ(運転注意力モニター)」や、万が一の衝突被害を最小限にする「AMB(衝突被害軽減ブレーキ)、車両を安定させて横転事故を抑制する「ESP(R)(車両挙動安定装置)」などを紹介するビデオを視聴しました。
これらの先進安全自動車(ASV)は、確かに事故を未然に防ぎ、安全運転を有効にサポートしてくれますが、それを使いこなすのはあくまでもドライバー自身だということを忘れてはいけません。
今回の研修会のメインテーマとなった「FCTM」も運転による疲労を軽減するために開発された技術のひとつですが、それを使いこなすのはやはり人間だということ。
「先進安全自動車(ASV)を導入しているバス会社だから安心!」ではなく、日々訓練を積み、技術を磨き、高い安全意識を持ったドライバー(経営者)のいるバス会社を選ぶことのほうが大切だということを忘れてはいけませんね。
(参考記事:三菱ふそうの安全性能についてはこちら)
■取材・撮影協力
シティアクセス株式会社
神奈川県横浜市中区新山下3-8-45
■資料提供
三菱ふそうトラック・バス株式会社
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