運行管理者にはたくさんの役割がある

バス安全運行スペシャリストへの道③~運行管理者は大忙し!~

つい勢いで「運行管理者」の国家資格を取る!
と、宣言してしまった編集部I。

前回は、NASVAが主催する「基礎講習1日目の前半」をご紹介しました。

今回はその後半、「自動車運送事業」の許可の続きである「運賃及び料金」の届け出からご紹介しましょう。

皆さんは、路線バスに乗るときに乗車運賃を払っていますよね?
例えば、都営バスなら23区内統一料金で、大人210円、子ども110円(現金で乗車した場合)と決まっています。

路線バスの料金箱

地方の場合は、どこのバス停から乗り、どこで降りるかによって料金が変わる区間制運賃を採用しているところもあります。

都市間高速バスの場合も同様。路線ごと、バス会社ごとに決まっており、繁忙期や閑散期によって多少の幅があります。

貸切バスの運賃・料金は、平成26年4月に国交省が上限から下限までの料金を定めており、その範囲の中で各バス会社が届け出ます。

貸切バスの運賃・料金に関しては、「安全対策のためのコスト」を考慮したもので、バスの利用時間と走らせた距離を合わせたもので計算します。

乗合バス(路線バス・高速バス)に関しては、国土交通大臣の認可を受ける「上限認可制」です。認可を受けた上限額の範囲内であれば、事業者が届け出ただけで運賃を設定できます。

変更する場合は貸切バスも乗合バスも30日前まで届け出ること。また、営業所などに運賃及び料金を誰でも見やすいように掲示することになっています。

もう一つ、営業所へ掲示するものとしては「運送約款」です。

こちらも国土交通大臣の認可が必要ですが、「標準運送約款」が乗合・貸切・乗用とそれぞれ存在しています。この「標準運送約款」をそのまま利用する場合は、特に認可を受ける必要ないので便利ですね!

公共性、安全性の確保は重要!

自動車運送事業者は、例外(道路運送法第13条の(1)~(6)に該当する)を除き、運送の引き受けを拒否してはいけません。

また、一度に大勢の人や物資を運べる「自動車運送事業者」は、災害時の救助や緊急物資の運送に機動力を発揮!このため、いざという場合は、国土交通大臣は協力を命ずることができるようになっています。

そして何よりも大事なのは、「安全性の確保」です。

運行管理者の選任は大切

ここで登場!運行管理者の選任!!

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道路運送法第23条(運行管理者)
一般旅客自動車運送事業者は、事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を行わせるため、国土交通省令で定める営業所ごとに、運行管理者資格者証の交付を受けている者のうちから、運行管理者を選任しなければならない。

2 前項の運行管理者の業務の範囲及び運行管理者の選任に関し必要な事項は、国土交通省令で定める。

3 一般旅客自動車運送事業者は、第1項の規定により運行管理者を選任したときは、遅滞なく、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない。これを解任したものも同様とする。

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運行管理者の選任に関し必要な事項は、旅客自動車運送事業運輸規則第48条(運行管理者の業務)に規定されています。

でもって、ここで規定されている内容はめちゃ大事!!!試験に必ずでるからね!という箇所です(詳しくは当該規則を参照)。「運行管理者を選任するのは事業者」っていうのは、おそらく間違えないのですが、うっかりするのが運転者の選任。

こちらも事業者がやるべきこと。運行管理者ではありません。

そして、輸送の安全を確保するためには厳しく守らねばならないことがきっちり定められています。

輸送秩序を確立するために、自動車運送業者は不当競争の禁止義務が、自家用自動車には営業類似行為の禁止義務があります。

よくある「白バス行為(自家用車でお金をもらってバスを運行する)」はダメですよ~ということですね。

自動車運送事業者を監督する国土交通省は、立ち入り検査や報告徴収、事業許可の取り消し、停止、事業改善、運行管理者資格者証の返納に関する命令をすることができ、その権限は地方運輸局長に委任しています。

国交省では軽井沢スキーバス事故を受け、道路運送法改正案を2016年9月26日から始まる予定の臨時国会へ提出すると発表しました。以前は運行管理を適切に行うなどの国からの改善命令に従わない場合は、個人、法人ともに100万円以下の罰金だったのですが・・・。

●道路運送法違反の個人(経営者、運行管理者など)に対しては懲役1年以下、罰金150万円以下と厳格化。
●事業者に対する罰金の上限を1億円まで引き上げる。
●事業許可もいままでは一度受けたらそのまま有効だったのですが、5年ごとの更新制を導入(既存業者も対象)し、社内の安全管理体制や経営状況をチェックする。
●事業者の負担金で各社を巡回指導する民間機関を設置し、問題が確認された業者は国から監査が入る。

などなど・・・。

前回もお伝えしましたが、運行管理者の資格取得が厳罰化され、国家試験合格者のみに限定すること。

法律違反を繰り返した場合は、事業許可取り消し処分や運行管理者資格者証の返納も盛り込まれました。

より安全にバスを運行、安心して利用できる体制づくりを目指しています。

ところで、具体的に運行管理者の仕事は?

簡単に説明すると運行管理者は、バスやタクシーなど、公共性の高い乗り物を安全に確実に運行するために、必要な権限を与えられている人で、誠実に業務を行うべしとされています。

台風や地震などの自然災害が起きた時どうするか、ドライバーさんの体調が急に悪くなった時どうするか、など、いろんな場面に応じて適切に判断し、対応することが重要ということです。

ちょっとたくさんあって、くらくらしてしまいますが、以下にまとめてみました。
(旅客自動車運送事業運輸規則・第3章運行管理者 第1節 運行管理者の選任等 第48条 運行管理者の業務より)

●車掌が必要なときは乗務させる(第15条 車掌の乗務)
●異常気象や天災などで輸送の安全確保に支障がある場合は、乗務員に必要な指示をしたり、安全のための措置をする(第20条)
●運転手さんに無理な運行乗務を強いらないよう、乗務割を作成し、それに基づいて乗務させる
でもって、運転手さんが休憩するための施設や睡眠、仮眠できる施設を適切に管理(第21条 過労防止等 第1、2項)
●酒気帯び状態の運転手さんを乗務させたらダメよ~(第21条 過労防止等 第4項)
●健康上の理由などで安全運転できない人にハンドル握らせないでね(第21条 過労防止等 第5項)
●長距離、夜行運行のときは交代運転手を配置(第21条 過労防止等 第6項)
●運転中に体調不良で安全運行ができそうにないときは、交替させるなど、安全運行のための措置を行う(第21条 過労防止等 第7項)
●運転手が乗務するときは前後で点呼(第24条 点呼等)を行い、健康上に問題がないか、アルコール検知器を使った酒気帯びの有無などを確認。乗務内容の指示や確認、報告、記録を行う。
●運転手に乗務記録をつけさせ、保存する(第25条 乗務記録)
●運行記録計を管理し、その記録を保存する(第第26条 運行記録計による記録)
●記録すべきときに記録できないなら、そのバス(タクシー)は使っちゃダメ
●乗合バスの場合は、運転基準図を作成して営業所に備え、運転手には適切に指導すること(第27条 第1項)
●路線バスの場合は、停留所の名前と発車、到着時刻、その他運行に必要なことを記載した運行表を作成して、運転者に携帯させること(第27条 第2項)
●貸切バスの場合は、事前に主な運行経路の道路状況(そのバスで走れる?など)や交通状況(路線バスはOKでも貸切バスはダメなど)を調査しましょう!(第28条)
●さらに「運行指示書(則第28条の2)」を作成し、担当する運転手に適切に指示。携帯させるとともに保存しましょう。
●事業者が選任(第35条)した運転手以外の人には運転させちゃダメよ。
●乗務員台帳(第36条)を作成し、営業所に備えて置くこと。
●タクシー・ハイヤーに関しては、乗務する際に乗務員証(第37条の第3項)を携帯し、乗務終了後は返還。

運転者証(タクシー業務適正化特別措置法:大都市で乗車拒否が多発したために策定)を表示させなければならないエリアで乗務するときは、自動車に表示させ、乗務終了後は保管する。

●乗務員に対して第38条(第5項を除く)の指導、監督及び特別な指導を行い、同条第1項の記録及び、保存をすること。

第38条で定められているのは、死者や負傷者がでるような事故を起こしたもの(事故惹起者)、新規で採用した運転手、高齢者(65歳以上)には特別指導をせよ、ということです。

この他にも、車掌への指導監督、いざというときのために、非常口、非常信号用具、消火器の取扱について指導が必要と定められています。

●運転手には国土交通省大臣が告示で定めた適正診断(則第38条第2項)を受けさせること。

適正診断とは、運転手の性格や安全運転態度、認知・処理機能、視覚機能など、心理・生理両面から「癖・傾向」をチェック。安全運転に役立つようなアドバイスを行うことをいいます。

特定の運転者(初任運転者、高齢者、事故を起こした運転者)は、それぞれ違う内容(種類)の適正診断を受けることになります。

※適正診断については、独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)のホームページで確認してください。

●踏切警手(いまどきどこも自動踏切だし、踏切番してる人いないよね・・・)がいない踏切を通過するときに必要な赤旗や赤色合図灯などの非常信号用具を備えて置くべし(第43条第2項)。
●運行管理者の補助者(第47条の9の第3項、代理業務が行えるわけではありません!)への指導、監督をすべし。
●免許の要件を満たさない人に運転させないこと(旅客自動車運送事業用自動車の運転者の要件に関する政令を参照)。

ざっくり説明すると、21歳未満はダメ、免許取得して通算3年未満もダメ、第二種持ってないのもダメということでしょうか。

●事故を防止(自動車事故報告規則第5条)し、安全運行を行うための指導、監督をせよ。。

う~ん。覚えられるだろうか・・・。心配になっちゃいました。

運行管理者は、ドライバーと事業者とのパイプ役

いくら安全運転でと声をかけたところで、実際にハンドルを握るのは運転手。バスを安全に走らせるために、運転手には具体的に何をしてほしいのか、安全意識を高めるためためにどのように声掛けしたらいいのか、運行管理者の「コミュニケーション力」が重要になってきます。

NOという勇気も必要です

また、運転手が感じていることを事業者に伝え、会社全体で共有することも大切。運行管理者は現場と経営者とのパイプ役になって、時には経営者に改善を求めるという姿勢も必要だということです。

運行管理者は、営業所ごと(他営業所との兼務は不可)に、配置している車両数で規定(旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について・第47条の9)されています。また、事業免許(路線・高速バス、貸切バスなど)によっても配置数は異なります。

例えば、貸切バスの場合、配置しているバスの数は29両までなら1名、30~59両までなら2名必要です。

その計算方法はバスの両数を30で割り、1を足した数が運行管理者の数。乗り合いバスやタクシーなどの場合は、40で割ります。この計算式は試験でよくでるポイントですよ~。

軽井沢スキーバス事故を受け、行政処分が厳しくなった一環として、運行管理者資格者証返納命令の対象範囲が拡大しました。

バス事業者が事業許可取り消し処分を受けるような事故を起こし、運行管理に関して悪質な法令違反があったと認められた場合は、その運転者が所属する営業所で選任されているすべての運行管理者が返納を命ぜられることに!(まったく関与していないことを証明された場合を除く)

返納を命ぜられた場合は、2年以上を経過しないと、再びその職務に就くことはできません。

運行管理者は、安全運行の要。責任感を持って職務を遂行する強い意志と、倫理観が問われる仕事だということですね!

[関連記事:NASVA安全マネジメントセミナー]

■参考資料
独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA)
http://www.nasva.go.jp/
本部
東京都墨田区錦糸3-2-1 アルカイースト19階
Tel: 03-5608-7560
「運行管理者 基礎講習用テキスト」第13版(2016年)
「同上 法令集 旅客編」第13版(2016年)

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この記事を書いた人
ちくわ

旅行メディア編集長兼ライター、総合旅行業務取扱管理者、旅行会社勤務経験あり、目黒区ボランティアガイド見習い中。プライベートでも古代史オタクとして年に数回フィールドワークに出かける旅好き。時々バス愛がさく裂!?

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