バス安全運行スペシャリストへの道②~基礎講習初日編~
さて前回、バスの安全運行を管理するスペシャリスト「運行管理者」の資格を取ろう!
とかなり軽い気持ち(ノリ!?)で基礎講習に申し込みをした編集部I。
雨が降る中、中華街で有名なJR「石川駅」までやってきました。
基礎講習が行われるのは「神奈川県立かながわ労働プラザ」。
駅からは歩いて約3~5分です。
こちらの3階にある多目的ホールが会場です。
エレベーターで昇ると、すでに受付を待つ人が行列をつくっていました。
すでに業務として運行管理のシゴトに携わっている人
入社してすぐ(ぐらい)の若者
バスやタクシー事業の関係者
私のように勢いで受験しようと考えている人(は、ほとんどいないと思うが)などなど
受付で受講料を払い、テキストを受け取ります。
ちなみに、今回使用するテキストはこちら!
オレンジの表紙はいわゆる「法令集」。
ブルーは講習会用にアレンジしたテキスト。
白の表紙は「労務管理」に関するテキストです。
結構分厚い・・・。
ちなみに、会場には約300人の受講者が集まっているそう!
受付番号がかかれている席に座り、3日間、ここで講習を受けます。
さあ!がんばるぞ!!
1日目は自動車運送事業に関すること
1日目のハイライトは「自動車運送事業に関すること」。
他人の需要に応じ、有償で、自動車を使用して旅客を運送するのが「旅客自動車運送事業」です。
旅客自動車運送事業は、その事業の形態や、使用する車輌の種別により、「一般乗合旅客自動車運送事業」、「一般貸切旅客自動車運送事業」、「一般乗用旅客自動車運送事業」および「特定旅客自動車運送事業」に細分されます。
簡単にいうと、お金をいただき、自動車などを使って、お客さんの行きたいところに運ぶ仕事(旅客自動車運送事業)だよーということ。
でもってお客さんを乗せる乗り物の種類によって乗合バス(路線バスや都市間高速バスなど)の場合は「一般乗合旅客自動車運送事業」と呼んでいて、貸切バス(観光バスなどを貸切って運行)の場合「一般貸切旅客自動車運送事業」、ハイヤーやタクシー(以下、ハイタク)の場合「一般乗用旅客自動車運送事業」、スクールバスや幼稚園バスは「特定旅客自動車運送事業」と細分化されるということです。
うーん。
最後までこの漢字に翻弄されそうな予感・・・。
ちなみに、今回の講習を担当する独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA)とは、自動車事故の発生防止及び、その被害者への支援の為の業務を行っている団体(通称ナスバ)。
自動車事故の発生防止活動の一つとして、運行管理者の育成や指導、運転者適正診断を実施し、安全運転を指導、運輸安全マネジメントの啓蒙やコンサルタントなどを実施。
また、自動車事故で後遺症が残り、なんらかの介護を受ける必要があった場合、その介護費用の支援を行ったり、相談窓口になっている機関です。
簡単にいえば、交通事故防止と事故による被害を受けた方の支援、ということでしょうか。
講習の中で、乗合バスや貸切バス、トラック、ハイタクが起こした交通事故についての傾向を紹介していましたが、交通事故全体の発生数は平成17年から減少傾向。
(詳しくはJ21後付け衝突防止補助装置「モービルアイ」の記事を参照)
しかしながら、近年は減少したり、増えたりと大きな変化はなし。
貸切バス事故で出た死傷者の数は一昨年、昨年とも3人ですが、今年は1月15日に起きた軽井沢スキーバス事故ですでに15人が死亡。
ちなみに、平成24年は11名死亡。
これは、記憶にもまだ新しい関越自動車ツアーバス事故が起きた年で7名が死亡しています。
つまり、今年は年明けから最悪なペース、ということになります。
運行管理者の役割はさらに重要に
バス事業は公共性が高く、安全性をしっかり担保しなければならないという事情から、長らく新しいバス会社が参入しにくい状況が続いていました。
その後、2000年2月に道路運送法が改正され、貸切バス(一般貸切旅客自動車運送事業)の規制緩和がスタート。
2002年(平成14年)に、路線バス(一般乗合旅客自動車運送事業)やタクシー・ハイヤー(一般乗用旅客自動車運送義業)の規制緩和が行われました。
バス事業の免許制を許可制にし、新規参入を促すことで、自由競争を通じた経済の活性化を図ろうというのが狙いでした。
1999年には2,336社だった貸切バス事業者は、2005年には3,923社と大幅に増加。
所有するバスの台数が少なくても、バス事業が始められるということもあり、小規模な貸切バス会社が増えた側面もありました。
規制緩和の自由競争で「悪質なバス事業者」が自然淘汰されることを期待されていたのですが、実際は価格競争激化の波に飲まれ、価格の下限割れや安全性を犠牲にした“綱渡り”的運行が行われてしまう例が後を絶ちませんでした。
「関越自動車道ツアーバス事故」、「軽井沢スキーバス事故」のような悲劇を繰り返さないためにも、さらなる安全対策への意識改革、法整備を行うとともに、バス事業者、運行管理者の責務は重大であるということを再認識。
気持ちを引き締めて、勉強に臨まなくては!と思いました。
自動車運送事業は「道路運送法」で規定されている!
さきほどバス事業が規制緩和で「免許制から許可制」になった・・・という話をしましたが、具体的にどのような条件が整うとバス事業を始められるのでしょうか?
それは「道路運送法」という法律に規定されています。
と、ここで、絶対試験にでるからね!という条文があります。
それは、道路運送法が制定された「目的」、第1章 総則 第1条です。
「この法律は、貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)と相まって、道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとし、並びに道路運送の分野における利用者の需要の多様化及び高度化に的確に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進することにより、輸送の安全を確保し、道路運送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図るとともに、道路運送の総合的な発達を図り、もって公共の福祉を増進することを目的とする。」
でた!
穴埋め問題・・・。
大事なキーワードが隠されていて、そこに正しいワードを入れろというタイプの問題です。
この条文はともかく丸暗記せよとのこと。
皆さんもひたらすら書いて、空で読んで覚えましょう!
さて、この道路運送法の第2章 旅客自動車運送事業 第4条に、「一般旅客自動車運送事業」を経営しようとする者は、国土交通省大臣の許可をえよ、と書かれています。
「一般旅客自動車運送事業」とはつまり、乗合バス(路線バスや都市間高速バス)や貸切バス、タクシー・ハイヤー事業を始めるときは・・・ということですね。
ちなみに貸切バス(観光バス)は「一般貸切旅客自動車運送事業」になりますが、乗車定員数11人以上の自動車を貸切って運送する事業と定義。
よくあるミニバス(コミューター)は、11~13人定員のものですがこちらは、貸切バス事業免許で運行するもの。
タクシー・ハイヤーは「一般乗用旅客自動車運送事業」で、乗車定員数10人以下の自動車を貸切って旅客を運送するもの。
いわゆるジャンボタクシーで、9名まで乗車できるバンタイプになります。
この大きさのものはバス会社ではなく、タクシー会社で手配しましょう。
自動車運送事業を始めるには?
国土交通省大臣より事業許可を得るために必要なのは
「輸送の安全上及び事業の発達上において適切な事業計画を有するものであること」など、一定の基準に適合していることとあります。
営業区域、営業所の名称や場所、営業所ごとに何台バスを保有するかなど、事業計画を記載した申請書を管轄する地方運輸局に提出しなければなりません。
例えば、神奈川県でバス事業を始めようとするならば「関東運輸局 神奈川運輸支局」になります。
乗合バス(路線バス)などでは、どこをどうバスを走らせるのか(路線や運行系統、運行回数など)も届け出なければなりません。
ここででてきた「営業区域」ですが、原則は都道府県単位(北海道は運輸支局の管轄区域単位、沖縄は島しょ毎)と定められています。
(一部例外はあり)
つまり、事業許可を申請した地方運輸局の管轄内でということですね。
たまに「東京都町田市」出発なので、神奈川が近いから、神奈川のバス会社にお願いしたいという要望をお客様からいただくことがありますが、この「営業区域」があるため、お引き受けすることができません。
あるいは、成田空港出発で「東京ディズニーランド」に行くから、東京のバス会社でもいいでしょ!
という問い合わせもいただきますが、「成田空港」も「ディズニーランド」も、千葉県なんでこれも無理です!!
「東京」って名前についているのにね・・・。
さて、初日の講義はまだまだ続きます(というか、全体の1/3も終わってないよ、とほほ)。
次回は「自動車運送事業」の許可の続き、運賃及び料金の申請からです。
(--続く--)
■資料提供
独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA)
本部
東京都墨田区錦糸3-2-1 アルカイースト19階
Tel: 03-5608-7560
「運行管理者 基礎講習用テキスト」第13版(2016年)
「同上 法令集 旅客編」第13版(2016年)
NASVA主催の安全マネジメントセミナー開催!
「軽井沢スキーバス事故」を受けた、安全対策のこれからや、ドライブレコーダーを活用した安全運転支援など、「安全」について考える一日です。
■参考資料
国土交通省
「バス事業について」
「バス事業の規模」平成27年3月末現在
国土交通省 関東運輸局
「バス事業を始めるには」
「規制緩和がもたらした悪夢ー貸切バスの事故はなぜ起こったかー」
専修大学 武田綱志著
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