ダブルデッカータイプ・エアロキング

プロドライバーを魅了する「三菱ふそうバス」、人気のヒミツ(3)歴史編

三菱ふそうバスが好き!
というドライバーさんがどんなところに魅力を感じているのか?

第1回目はそのデザインや居住性などについて
第2回目はドライバーさん目線で運転のしやすさや安全性について紹介してきました。

第3回目は三菱ふそうバスの歴史についても目を向けていきましょう!

2012年に80週年を迎えた三菱ふそうトラック・バス。
「ふそう(扶桑)」とは、古来中国のことばで「東海日出る国に生じる神木」を意味するそうです。
1932年(昭和7年)にふそうバスの1号車「B46型乗合自動車」が発売された際、愛称を募集したときに選ばれたのが「ふそう」でした。

その後、トラクターを牽引するタイプのバストラクタやディーゼルエンジンバス、セミデッカーバスなどを次々発売。
戦後の物資や資源が圧倒的に不足する中、いち早く復活したのもふそうバスでした。

2階建てバスや収納スペースがある小型バスなど、今も人気のバスを多数製造

50年代には定員79名乗れる大型バス(R1型)やトロリーバス(TB12型)、チリ向け輸出用R32型などを製造。60年にはローザB10型、62年には高速バス(AR820 型)、82年にはエアロバス、84年にはエアロスターが登場します。

80年代といえば、ダブルデッカーバス(2階建てバス)ブーム!西ドイツのネオプランなど、たくさんの輸入バスが日本に輸入される中、ついに国産のダブルデッカーが登場します。

84年には日産ディーゼルが「スペースドリーム」を、85年には日野自動車が「グランビュー」を、三菱ふそうバスは「エアロキング」を発売しました。

三菱ふそうが動体保存している「エアロキング」
三菱ふそうが動体保存している「エアロキング」(撮影協力:帝産観光バス)

ところが、日本には「道路運送車両法保安基準」として、バスの高さ(全高)を3.8m以下に抑えることという決まりがあります。このため、1階席・2階席とも天井が低くなり、居住性がイマイチ・・・。

車体が重いため燃費もかかりすぎるということで、どのメーカーも製造を中止しています。

最近では定期観光用のバスとして、オープントップの2階建てバスがブームになっていますよね。

スカイバス東京のオープントップバス
2015バスフェスタ東京で展示されたオープントップバス

日の丸自動車興業の運行する「スカイバス東京」やはとバス「オーソラミオ」など、海外からバスを輸入し、独自の改造で運行しています。眺望を楽しみながら観光が楽しめることもあって人気です。

東京だけではなく、大阪や京都、広島、福岡でも運行しています。

今後このブームに載ってダブルデッカーバスを製造する予定は・・・?
とお伺いしたところ「ない」とのこと。

うーん残念です。

現役で走るエアロキングを所有しているのは、JRやウイラーバス、はとバスなど。希少な国産2階建てバスを見かけたらぜひ、写真を撮っておいてくださいね。

もう一つ、バス会社さんから特に惜しまれているのが小型観光バス「エアロミディMJ」です。

三菱ふそう「エアロミディMJ」
(写真提供:東京ワーナー観光)

7mサイズのコンパクトなバスでありながら、貫通式のトランクルームを装備。
大サイズのスーツケースが何個乗せられるか実験で12個は積める!という結果が得られています。

取材に協力してくれた東京ワーナー観光さんももっとこのバスを買っておけば良かった・・・と後悔。
観光バスとしての乗り心地も抜群で、お客様からも人気が高いといいます。

こちらのバスが復帰する可能性はっ!?

と、伺いましたがこちらもNo・・・。
今後、小さいタイプのバスならローザ(マイクロバスタイプ)もしくは、エアロエースMM(ショートタイプ)を選ぶことに。
残念です。

要望の高かったローザの4WDモデルが復活!

結婚式法事などの送迎で人気の高いマイクロバス。
「貸切バスの達人」でも、リーズナブルに借りれるマイクロバスは大人気です。

ローザは1960年、新三菱重工業(現・三菱重工業および三菱自動車工業)が製造したマイクロバス。
中型トラックのジュピターをベースにしており、他のマイクロバスに比べて大きめの車体が特徴でした。
メルセデス・ベンツL319の影響を受けたスタイリングで「だるまローザ」の愛称も。

その後、2代目、3代目とモデルチェンジ、マイナーチェンジを重ね、現在は4代目。
2011年8月に「平成22年排ガス規制」に準拠したモデルを発売する際、4WD車を廃止。
2015年11月に、4年ぶりの製造再開です。

三菱ふそう・ローザ4WD
(写真提供:三菱ふそうトラック・バス)

マイクロバスタイプでは国内唯一の四輪駆動車。
雪道や山道での安定走行、平成27年度重量車燃費基準+5%を達成し、従来のローザ4WDに対し、燃費を大幅に改善しています。
平成22年度排出ガス規制(NOX及びPM10%以上軽減)にも適合し、環境へも配慮したモデルになっています。

過疎化が進み赤字の路線バスが次々廃止される中、コミュニティバスが導入されるケースが増えています。
細い道でもスイスイ運行できるマイクロバスはコミュニティバスに最適。

山道や悪路、雪道などでも機動力を発揮する4WDタイプはまさに救世主かもしれません。

また、ローザは幼稚園バスに最適な幼児車も一時生産中止していましたが、2014年に復活。
動きの予測がつきにくい幼児が安全に乗り降りできるようにさまざまな配慮がされています。
さらに車内のインテリアにも一工夫、かわいいイラストが使われたベンチシート!

三菱ふそうローザ・幼児車
(写真提供:三菱ふそうトラック・バス)

バスに乗るのが楽しくなりますね。

この他、車椅子での乗り降りがしやすい「チェアデッキバージョン(室内格納式パワーリフト付)」も。

三菱ふそう・ローザ福祉バス
(写真提供:三菱ふそうトラック・バス)

多彩なニーズに応えるラインナップのローザを、導入したいと考える自治体や会社は多いのではないでしょうか。

三菱ふそうバスの未来

国交省では昭和41年から自動車の排出ガス規制を開始し、年々強化してきています。
バスのようなディーゼル車についても同様で、平成27年7月「ディーゼル重量車及び二輪車の排出ガス規制強化」でさらに厳格化した排ガス試験を適用すると発表がありました。

環境に負荷をかけないため、三菱ふそうバスでは現時点で世界で最も厳しい平成21年排出ガス規制に適合するとともに、低排出ガス車認定車(NOX&PM10%低減)も取得。
今後はさらに厳しい基準(2017年の排ガス規制)に適合すべく、チャレンジ中とのこと。
さらに進化を遂げた三菱ふそうバス、楽しみですね!

他バスメーカーも、環境負荷の低減を目標にさまざまな取り組みを行っていて目が離せません。

たとえば、日野自動車では、水素を燃料にしたトヨタ自動車の燃料電池車(FCV)システムを搭載したハイブリッドバスを2015年1月から豊田市内で運行実験開始。

日野自動車・水素燃料バス
2015東京モーターショーで展示された水素燃料バス

いすゞ自動車では、CNG(天然ガス)を燃料とした大型路線バス「エルガ」を展開。
また、2014年7月からいすゞ湘南工場と湘南台駅とを結ぶシャトルバスにはミドリムシからつくられたバイオディーゼル、DeuSEL(R)燃料が使われています。

働く車として日ごろはあまりスポットライトが当たりにくいバスですが、快適な乗り心地や安心・安全のための機能だけではなく、環境へのやさしさへのチャレンジも大きな課題。

世界的なネットワークを誇るダイムラーグループの一員として、これからもプロのドライバーを魅了する、そして、乗客からも「乗りたい!」と支持される、三菱ふそうバスらしいバスをぜひ造り続けてほしいと思いました。

エアロスターとエアロクイーン

■取材・撮影協力
三菱ふそうトラック・バス株式会社

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この記事を書いた人
バス観光マガジン編集部 編集ライター

バス観光マガジンの中のヒト。貸切バスについての基礎知識やバス旅行のヒント、バスファンのための情報など、バスに関する楽しいコンテンツを日々お届けします。

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